もちろん、放課後は沖田を呼びに行って。
一と他の部員にも審判してもらって試合をすることになった。
斎「・・始め!」
「やああああああ!」
気合いを入れて面を狙いにいく。
沖田は背が高いから本当は小手や胴を狙いにいったほうがいいんだろうけど。
沖「っと・・。」
私の一撃を軽く流して面を狙ってくる。
そう何度も何度もあんたの攻撃をくらうと思うなよ。
今日は負けるわけにはいかないんだから!
沖田の竹刀を避け、そのまま小手を狙いにいく。
あたったけど少し甘かったのか、旗が一人しか上がらない。
沖「小手ーーーー!」
斎「小手あり!!」
ちっ・・油断した。
沖田の小手が綺麗に決まったのは自分でもわかった。
最初の位置に戻ってお互いに構える。
沖田の目がいつもと違って見えた。
なんていうか・・本気?
ふざけている様子はない。
なんだ。
ちゃんとできるんじゃん。
斎「始め!」
一の号令で試合が再開する。
落ち着いて。
息を整えて。
気持ちで負けない。
「やああああああ!」
面を狙いにいく。
ふりをして小手を狙った。
「小手ぇ!!!!」
斎「小手あり!!」
・・・やった!
一本とった!!
あと、あと一本!
沖田のほうを見ると少し微笑んでいるように見える。
余裕か!?
一本ぐらいとられても問題ないってか!?
斎「勝負!」
これが最後。あと一本とったほうが勝ち。
沖田が素早く一歩踏み込んできた。
竹刀で受け、鍔迫り合いとなる。
沖「名前ちゃん。」
「何!?」
こいつ試合中に話しかけてくるって何考えてるわけ!?
沖「やっぱりすごいね、強いよ、名前ちゃんは。でも。」
「?」
沖「ごめん、負けたくないんだ。君には。」
「え?」
いきなり沖田が力をぬいた。
思い切り力を入れていた私はそのまま前のめりになって。
斎「面あり!勝負あり!」
負けた。
また負けた。
しかも今回はいつもと違う。
負けたらなんでもいうこと聞かなきゃいけない。
小手や面を外しててぬぐいもとると沖田が横に座って小手や面を外し始めた。
沖「やっぱり僕の勝ちだね。」
面を外した沖田はさわやかな笑顔でこちらを見ている。
仲間にしますか?
・・・仲間にしたくない。
無駄にドラ○エの映像が浮かんでしまった。
「っ・・・何よ、何すればいいのよ。」
沖「名前ちゃんに一本とられたし、剣道部入ろうかな、僕。」
「え?」
予想外の答えに驚いてしまう。
沖田はてぬぐいで汗を拭いながら言葉を続けた。
沖「もともと入ろうとは思ってたんだけどね。毎日勧誘にきてくれる誰かさんがいたし。」
「か・・勧誘!?」
ちょっとそれ私のこと!?
勧誘じゃない!勝負しに行ってただけだけど!
「じゃあなんでさっさと入らなかったのよ。」
沖「だってそうしたら名前ちゃん、迎えに来てくれないでしょう?」
迎え?
え?何言ってるの??こいつ。
沖「今日は名前ちゃんいつも以上に気合いが入ってたから焦ったな〜。でも負けるわけにはいかないんだよ。僕。」
「・・なんでよ、私が女だから?」
沖「違うよ。」
沖田が少しずつこっちに近づいてくる。
思わずかたまると耳元で小さな声がした。
沖「好きな子に負けたくなんかないじゃない。」
「え・・・・・・?」
沖田は素早く離れて元の位置に戻る。
だけど顔は笑ったままだ。
沖「なんでも言うこときいてくれるんだよね?じゃあ僕と付き合ってくれる?名前ちゃん。」
「はあ!?」
沖「とりあえずふりでもいいよ。好きにさせてみせるから。でも毎日一緒に帰ろうね。これは命令ね。」
「ちょっと!?ちょっと待って!!!」
沖「あ、一君!!僕剣道部入ろうと思うんだけど〜。」
言うだけ言って沖田は一のもとへ走っていってしまった。
何それ。
付き合う?
一緒に帰る?
好きにさせてみせる!?
「好きな子って・・・・。」
なんか思い切り巻き込まれている気がする。
ちょっと待って。
沖田って私のこと・・す・・好き?
「///////////////」
剣道しかなかった。
好きだのなんだの考えたことなかった。
なのに何で・・私?
目の前に置かれた面を見ていることしかできなかった私のところへいつの間にか沖田が戻ってきていた。
沖「名前ちゃん?真っ赤だけど大丈夫?」
「えっ・・//?」
沖「熱でもあるのかな?」
こいつ・・わかって言ってる。
だって顔が笑ってる!!!
なのにわざと人のおでこに手なんてあてやがって!!!
「触るな!沖田!」
沖「総司。」
「は?」
沖「付き合うんだから名前で呼んでね。あと正式に剣道部入ったからこれからよろしくね、名前ちゃん。」
剣道も、恋も。
何一つ敵わないこいつに。
振り回される毎日が始まってしまったみたいだ。
「絶対いつか勝つ。」
沖「?なんか言った??」
いつかは・・
剣道も。
恋も。
こいつに勝てるようになるんだから!!!
終
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