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女の子だけど強かった。
気を抜いたら一本ぐらいとられていたかもしれない。

そんな子に会ったのは初めてだったから。


あの日から隣のクラスの君を見つけるのが僕の日課になった。



沖(あ・・隣のクラス体育か。)



眠気を発生させているとしか思えない古典の授業を聞き流しながら僕は窓の外を眺めていた。


校庭では隣のクラスが体育をしている。
男女混合でフットサル。
普通男女別でやると思うんだけど、この学校女子が少ないから仕方ないのかな。



沖(名前ちゃんだ。)



彼女は目立つ。
何故って。




沖(あんなに向かっていく女の子いないよね。)



男子がボールを持っていようとなんだろうと突撃していくのは彼女らしい。
思わず頬がゆるんでいることに気がついた。




沖(あ!)




名前ちゃんが転んだ。
・・・だいぶ派手に。

すぐに起き上がって近づいてきたチームメイトに笑ってる。
かなり痛かったと思うんだけど。
ほんと弱いところみられるのが嫌なんだね、あの子。



すると彼女はその場から抜け、すたすたと校舎の方へ向かっていった。




沖(うーん・・・。)




僕は眠気発生装置、別名土方先生に手を挙げて言った。






沖「先生ー。ちょっと気持ち悪いんで保健室いきまーす。」












――――――――――――――――――――






 「いたたっ・・。」



保健室に山南先生の姿はなく、仕方なく一人で手当てすることにした。



 「思い切りこけたなぁ・・。」



膝は軽く擦りむいた程度だったけど両手の肘はがっつり擦りむいている。
骨に異常はなさそうだけど擦り傷が痛々しい。



消毒液をガーゼにつけ、傷口にあてるとしみる。



 「う・・。」



あー足もやらなきゃな・・なんて思っていた時だった。





沖「ほんと派手に転んだよね、名前ちゃん。」




誰もいないと思っていた保健室に声が響いた。
しかも、聞き覚えのある声。




 「・・沖田!?」



ベッドのほうからふらりと現れた沖田は私のところへ歩いてくると傷口をまじまじと見つめている。



 「なんでここに!?」



沖「なんでって、ちょっと具合が悪かったから寝てただけだよ。僕繊細だから。」



 「繊細な奴は自分で繊細とか言わないんだけど。」



沖「いたそ〜。」



 「別に痛くないし。これぐらい・・。」



沖「そうなの?」



 「いったあ!!」



そうなの?と聞くとほぼ同時ぐらいに人の傷口にガーゼ押しつけやがった!こいつほんと性格悪い!!!どこが繊細よ!?




沖「僕には痛そうに見えるけど。」


ニヤリと笑いながら目の前に跪く。
イラつかせる天才よね、あんた。



 「うるさいなぁ。」



沖「ほら、手、かして。」



 「え?」



そう言うと沖田は私の手をとり、ちょんちょんと肘の手当を始めた。
あっという間に絆創膏まで貼られ、膝の手当にうつっていた。




沖「はい、おわり。」


 「ありがと・・。」



沖「名前ちゃんって傷も多いけど痣だらけだね、あちこち。」



 「剣道やってたら痣のひとつやふたつ当然でしょ。」


確かに女子らしくない手足してるとは思うけどそれを嫌だとも思ったことはない。
だってそれだけ練習してる証だし、名誉の負傷みたいなかんじ?



沖「剣道好きなんだね。」



 「ってか、それ以外何もとりえないもん。沖田も真面目に剣道部入ってやればいいじゃない。・・・強いんだから。」



最後のは癪だけど本当のことだから言った。
すると目の前に跪くように座っていた沖田は一瞬目を丸くしてこっちを見る。



沖「僕に剣道部入ってほしいの?」



 「別にやる気のないやつはいらないけど。でも強いし。真面目にやるなら・・。」



沖「じゃあさ、名前ちゃんが僕に勝ったら剣道部入ろうかな。」


 「え?」


沖「どうせ今日も試合するんでしょ?あ、怪我したからしないのかな?」


 「これぐらいの怪我で休むわけないでしょ!」



沖「じゃあ決まりね。名前ちゃんが勝ったら剣道部に入って真面目にがんばるよ。でも僕が勝ったら。」



 「??」



沖「なんでも言うこときいてね。」




 「・・・はあ!?」



沖「ふふっ・・何してもらおうかな??」




こいつ・・
顔が悪い顔になってる!
なんでこいつのパシリにならなきゃいけないわけ?!




 「ちょ・・ちょっと!」



沖「え?何?まさかもう負けること想像してるの?そんなことないよね?」



 「っ〜〜〜〜〜!!!」



い ち い ち む か つ く!!!





沖「じゃあ放課後ね。」




手をひらひらとさせながら沖田は保健室を出ていった。
どこが具合悪いわけ!?




――ほんと派手に転んだよね。





沖田の言葉が頭をよぎった。
あれ?
保健室のベッドからじゃ外は見えないのに。





なんで知ってたの?






 「・・・・!?」





これじゃまるで。





私がくること、知ってたみたいだ。
私が怪我したこと、知ってたみたいだ。




 「そんなはず・・ないよね。」




わざわざ様子を見に来てくれたなんて。



ありえない。

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