斎「名前・・。」
「一。」
座りこんでいる私の所に一が歩いてきた。
横に座ると沖田の方を眺める。
審判用の旗をくるくると丸めながら口を開いた。
斎「毎日毎日よく飽きずに試合できるな。」
「だって悔しいんだもん。勝てないんだもん。」
一に負けるのは悔しくないのかって言われると悔しくない。
一とは小さい頃から一緒に剣道を習っていて、いつも強くて憧れだったから。
一は私の目標だから強くていい。真面目に練習してるしね。
だけどあいつは違う!
毎日練習してるわけでもないのに強いなんて。
勝てないなんて。
悔しいじゃない!
斎「負けず嫌いだな、本当に。」
「知ってるくせに。」
斎「ああ。」
一は微笑むと置いてあった竹刀を掴んで立ち上がる。
斎「練習するか?」
「うん!!」
そうだ。
強くなるには練習しなきゃ。
私は投げつけていたてぬぐいを頭に巻き、面をつけた。
沖「ねえ、あの二人って仲いいの?」
かかり稽古をしている名前ちゃんと一君を眺めながら、横にいる部員に話しかける。
部員「え?あぁ、名字と斎藤?幼馴染なんだとよ。」
沖「へえ。」
部員「小さい頃から剣道やってるみたいだからずばぬけて強えよ。名字なんて女子だけど俺達敵わねえし。」
沖「ふーん。」
部員「いいよな、斎藤は。ちょっと強気だけど可愛い幼馴染がいてよ。付き合ってんのかなー。」
沖「付き合ってはないんじゃない?」
部員「ま、俺もそう思うけど。斎藤かたいからな。」
ケラケラ笑う彼の隣で僕はただ二人を眺めていた。
剣道部に入ろうと思って見に来たけれど予想以上に弱いことにげんなりしたのは事実。
一君ぐらいしか強い人がいないんじゃ帰宅部でもいいかなって思っていたけれど。
それでも僕がここにきてしまう理由は。
名前ちゃん。
あの子がいるからなのかな??
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