家は隣同士だからそれこそ玄関先まで一緒に帰ることになるんだけど。
母「あ、総司。名前ちゃんもちょうどよかった。」
自分に家へ入ろうとした瞬間、母親が飛び出すように出てきて思わず一歩後ろに下がる。
「あ、おばさんこんにちはー。」
沖「どうしたの?」
母「ちょっと町内会の集まりでご飯食べてくるわ。名前ちゃんのお母さんも一緒に行くから、二人はうちでご飯食べててね。あ、宿題ちゃんとやりなさいよー。」
慌ただしく母親は出ていくと名前の家へ入っていった。
おそらく一緒に出かけるんだろう。
「久しぶりだなー総司の家でご飯!!」
そう言うと楽しそうに名前は家へと入っていった。
沖「あ!こらちょっと!」
追いかけるように僕も家へと入る。
これは何。
信頼されてるととればいいの?
どうせこいつら二人にしても何もないよって思われてるの。
・・・後者だろうね。
そりゃ母さんも帰ってくるし、父さんだって帰っては来る。
だけど・・。
二〜三時間は二人きりになるわけで。
「カレーだよ!カレー!総司お腹すいたから食べていい??」
鍋の中を覗きながら名前はてきぱきと夕食の準備を始めていた。
キッチンでちょこちょこ動いている彼女に。
つい未来を想像してしまった自分を殴りたい。
また。
僕だけ意識してるじゃないか。
「うわっ!カレーこぼした!!」
沖「・・何やってるの・・あーあ、シャツにカレーついてるよ。」
「やばいやばい!制服なのに!総司、洗濯機かしてー!あとTシャツも!!!」
バタバタと洗濯機置き場へ一直線の名前を見送りながら。
カレーで良かったよ。シチューじゃなくてとか高校生独特のくだらない考えに頭が痛くなった。
僕はコンロの火を止めると自分の部屋へと向かった。
沖「どうして落ち着きがないんかな・・名前は。」
――バタンッ!
「漂白剤使ったからギリギリセーフ!!あ、Tシャツあった??」
ノックなしに入ってくることぐらいは予測できた。
まあ、別にそこに問題はないんだけど。
沖「っ・・・////」
「総司?」
スカートの上がキャミ一枚って状態で突入してくるのは大問題じゃないの?
人が動けないというのにすたすたと僕のところまで歩いてきてタンスからTシャツを引っ張りだす。
もぞもぞと着替えると部屋をきょろきょろとみだした。
こっちは目のやり場に困っていたというのにね!
「総司の部屋久しぶりー。」
沖「//そ・・そうかもね。」
そういえば・・お互いの部屋に入るなんてしばらくしてなかったな。
「でも、総司のにおい、変わらないね。落ち着く。」
だからそれわざとなの?
時に無意識とか無邪気とかって故意よりひどいと思うんだけど。
ちょっとだけむかついたから。
少しからかってやろうと思った。
prev / next