夕飯の後、近藤さんがお酒をいただいてきたと言って幹部のみんなに飲むように言った。
近藤さんも土方さんも強くないからか、二人は広間から出ていってしまった。
平「やったー!うまい酒飲める!!」
千「私何かつまめるものを持ってきますね。」
永「よろしくー千鶴ちゃん!」
原「おいおい、あんまり慌てて飲むなよ、勿体ねえだろ。」
ぎゃーぎゃー騒ぐのいつものことだけど。
これが楽しいと思えるようになったのは最近のこと。
やっぱり斬り合いをしている人達は怖いし、みんな常に刀持ってるし。
だけどこんな私を受け入れてくれたんだから感謝しなくちゃね。
「はい、どうぞ。原田さん。」
原「お、悪いな。名前。」
近くにいた原田さんにお酌をする。
それにしてもマンガみたいにここの人達は顔が整ってるんだよね。
現代にいたら間違いなく芸能人になってそうだな。
原「美人についでもらうと酒がうまいな。」
「なっ////何言ってるんですか!」
しかも口がうまい。
こういうの慣れてないからやめてほしいです。
永「なんだよなんだよー!俺にもお酌してくれよぉ・・名前ちゃん!」
「あ、はいどうぞ?」
平「俺も俺も―!!」
「はいはい。」
永倉さんは大きいし年上だろうけどでっかい弟にしか見えないし、平助君にいたっては完璧弟だよね。可愛いもん。
永・平「「うめー!!」」
思い切り手を伸ばし杯を掲げているのを見て思わず笑ってしまった。
斎「名前・・。」
「はい?あ、斎藤さんもどうぞ。」
小さく私を呼んだ斎藤さんに私はお酌していなかったことに気がついた。
斎「すまない・・。」
「いえいえ。」
斎「あんたも飲んだらどうだ?」
「私ですか?」
斎「少しは飲めるだろう?」
「まあ・・ではいただきます。」
少しだけお酒を飲むと思ったより強い味がしてびっくりした。
あれ、昔のお酒ってうすめて飲んでたんじゃないんだっけ!?
「けほっ。」
思わずむせると斎藤さんが心配そうに背中をさすってくれる。
斎「大丈夫か??少し強かったか・・。」
「だ・・大丈夫です。思ったより強かったので・・あはは。」
あれ?
そういえば。
こんなとき、真っ先に来そうな沖田さんがいない。
沖「僕にお酌しないなんてどういうつもり?」
とか。
沖「そんな子は今すぐ斬っちゃおうかな。」
とか。
沖「これぐらいも飲めないの?ほら、もっと飲んでみなよ。」
とか言いそうなものなのに。
くるりと広間を見渡せば、襖を開けて庭を静かに眺めている沖田さんが見えた。
私の視線に気がついたのか沖田さんもこちらを向き、視線が合う。
(あれ?)
絶対目が合ったのにすぐに逸らされてしまった。
どうしたんだろ?
私は立ち上がり沖田さんにゆっくり近づいた。
他の人は盛り上がってるし、少し離れても大丈夫だろう。千鶴ちゃんも戻ってきたし。
「あの・・沖田さん?」
沖「何?」
呼びかけて返事はしてくれるものの、視線はまだ庭のほうを向いたまま。
怒ってる?
「なんか、機嫌悪いですか?」
沖「なんで。」
「だって、こっち向かないから。」
沖「君の方を向かないと機嫌が悪いの?いつも君を見ているわけじゃないんだけど。」
――ズキッ
あれ。
なんか痛い。
そうだよね。
別に沖田さんは私をいつも見てるわけじゃない。
からかいやすいから時々かまってるだけだ。
なのに。
私、何か期待してたんだろうか?
隠れていたくせに。
見つけてほしいなんて思ってた。
これはつまり。
沖田さんのことが・・。
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