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そして…沖田の誕生日当日。


(本当に持ってきてしまった…。)


カバンの中にはプレゼント。
そして隣を見れば。


「どうしたの?これ欲しいの?」

朝からいろんな女子にプレゼントをもらいまくっている沖田が私にお菓子を突き出していた。

「それ…もらったんでしょ?私にあげちゃっていいわけ?」

「お菓子なんだし、しかも僕がもらったものをどうしようと関係ないじゃない。」

「そりゃそうだけど…。」


プレゼントといっても大半はお菓子らしい。
本気で沖田を狙っている子達は何か違うものを渡していたようだけどまだ数は少ない。
きっとみんな狙うのは放課後なんだろうな。


「で、名前は?何かくれないの?僕誕生日なんだけど。」

「は?なっなんで私が…。」

「なーんだ。お菓子の一つももらえると思ってたのに、残念だなあ。」



ちがーーーーーう!!!
そんなこと言いたいんじゃない!
何言ってんだ私は!馬鹿者!
練習したじゃん。散々練習したじゃん!!!


「期待してたんだけどな。名前からのプレゼント。」

「なんで私があんたにプレゼントなんて…。」

「だって名前は僕のこと一番わかってくれてるでしょ?」

「っ!?!?か…勘違いだ!」


思わず上ずった声がでて、沖田がクスクス笑った。なんなの!?またからかってるわけ?
悔しいけどうまくやりかえせない。


それでも何か言い返そうとした私を遮るように授業開始のチャイムが鳴り響いた。
それを合図にお互いなんとなく前を向く。


ほんと…可愛くない。
なんでもっと、もっと私は…。
可愛く言えないんだろう。





カバンの中のプレゼントは結局取り出せないまま。
あっという間に放課後になってしまった。



クラスメイトがそれぞれ帰り支度を始め、私もカバンに荷物を詰めだした。
視界に入るのはプレゼント。
これ、どうしよう…。


(持ってても仕方ないし…うん、渡すか。さりげなく、さりげなく。)


隣を見れば沖田が携帯をいじっていてまだ帰る気配がない。
もしかしたら隣のクラスの斎藤君を待っているのかも。

一人二人とクラスメイトが教室を出ていき、教室には私たちだけになった。
これは絶好のチャンスだ。


「あの、沖田。」

「んー?」

携帯から視線を私のほうへうつした沖田はどうしたのと少し笑ってる。
こいつ…やっぱり私が持ってきてるのわかってるわけ!?何エスパーとか!?

私がカバンの中に手を入れたまま固まっているとパタパタと教室に入ってくる足音が聞こえた。


「あの!沖田君!!お誕生日おめでとう!」

「ん?ありがとう。」

「これ…よかったら使ってください。」


そう言って彼女は綺麗に包まれたプレゼントを沖田に渡し、そのまま小走りに立ち去って行った。

「なんだろーね。」

そう言いながら沖田がプレゼントを開けるとそこにはシルバーのアクセサリーが入っていた。
そして手紙も。


「付き合ってください…か。」


呟きながらアクセサリーを持ち上げ、じっと見ている沖田。
その姿に胸が苦しくなる。


だって…今のは。



私が理想としていた光景だ。
私が頑張ってやりたかったことだ。



なのに、やっぱり私は。
意地はって、可愛いことの一つも言えなくて。


そして、何も行動できていない。


「名前?どうしたの?」

「…。」

「なんで泣きそうなの。」

「泣きそうなんかじゃないし…。」

「何か言いかけたよね。何を言おうとしてくれたの?」


なんでそんな優しく聞いてくるの。
沖田は私が沖田のこと一番わかってるって言うけど逆なんだ。
私が素直に言えないから、渡せないから、そういうのがわかってるからこうやって聞いてくれるんだ。



私はカバンからプレゼントを取り出し、沖田へ突き出した。


「お誕生日、おめでと。」


やっぱり可愛く渡せないけど。
だけどこれでいいんだと思う。

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