広間の横の縁側に座ると綺麗な月が見えた。
近藤、山南、井上も加わり賑やかな月見が始まる。
永「うまそうな団子だなー!」
近「名前君が一人で作ったのか?たいしたものだ。」
山「おいしそうですね。」
井「次からはちゃんと手伝いを頼みなさい。喜んで作るからね。」
「ありがとうございます!」
原「それにしても、さっきお前大切な人に作るって言ってたよな?」
原田の一言に思わず全員が口を閉ざす。
名前は少し照れたように微笑むと全員のほうを向いて言葉を続けた。
「私が毎日楽しく働けるのは、新選組の方々がとても優しくて、良い人だからです。日ごろお世話になっているのでお給金が出たら何かしたいと思っていたんですけど、これぐらいしか思いつかなくて。さっき言った大切な人というのは皆さんのことです。」
斎「そう…だったのか。」
「だから、これからもよろしくお願いします!」
近「君は我々の大切な仲間だ。こちらこそ、これからもよろしく頼む。」
平「あったりまえじゃん!…ということで、食べていい?」
そんな藤堂の言葉に笑い声が上がった。
永「餡と醤油…どちらから食べるか。」
沖「ほら、新八さん。迷っていたらなくなりますよ。」
原「急いで食べても喉につまらせるぞ。」
永「どうすりゃいいんだよ!?」
斎「どちらも少しずつ食べればいいだろう。」
騒がしく食べている者たちを眺めるように近藤、山南、土方は少し離れて団子を食べていた。
「あの、お口にあいますか?」
近「ああ、とてもうまい!君は何でも上手に作れるのだなあ。」
山「ええ。おいしいですよ。」
土「…悪くない。」
山「土方君は照れ屋ですからね、気にしないでください。」
土「山南さん!」
名前は土方の横に座るとすでにからになっていた湯呑みにお茶を注いだ。
土「ありがとな。」
「いえ、皆さんに気に入っていただいて良かったです。」
土「せっかくもらった給金を俺達なんかに使うなんて変わった奴だな、お前は。」
「そうですか?」
土「…今度、どっか出かけるか?」
「え?」
土「この量の団子作ったんだ。けっこうかかっただろ。何かうまいものでも食べに…。」
「いえいえ!そんな!私がやりたかっただけですし、土方さんお忙しいですから。」
土「…。」
一瞬黙った土方だったが軽く名前を引っ張ると
土「俺がお前とでかけてえんだよ。」
小声で耳打ちをした。
「っ////!?」
土「…おい、平助達が呼んでるぞ。」
「え!?あ、はい!!!」
名前は慌てて土方の隣から立ち上がると賑やかな輪の中に入っていった。
沖「名前ちゃん、おいしいよ。」
平「ほんとほんと!お前が作るのは何でもうまいよなー!」
永「いい嫁さんになるぜ!」
「いえ///良かったです。」
斎「名前。」
「はい?」
斎「あんたはまだ一つも食べていないのではないか?」
「あ…。でもこれは皆さんの為に作ったものですから。」
斎「あんたも食べろ。」
そう言うと斎藤は餡ののった団子を名前に差し出した。
名前がどうしようか迷っているとその団子はゆっくりと彼女の口元へ近づく。
「斎藤さ…んむっ。」
開いた口に団子が入ってきた。
そのまま一つ口に頬張るとゆっくりと串がぬけていく。
斎「醤油の方も食べるか?」
そう言ってもう一つ団子をとると名前の口元へ運ぼうとする。
「いえ、あの…。自分で!自分で食べます!」
斎「!?////すまない!」
沖「一君、自分でしておいて赤くなる?普通。」
平「ずっりー!一君!名前、ほら、醤油の団子も食べるか??」
原「落ち着け、お前ら。名前が困ってるだろうが。」
「あはは…大丈夫です。いただきますね。」
名前が目の前の皿にのっていた醤油の団子を手に取った。
原「いつもうるさくて悪いな。あいつら嬉しくてしょうがねえみたいだ。」
「喜んでいただけると私も嬉しいですから。原田さん、お口に合いました?」
原「ああ。特にその醤油のは。」
そう言うと原田は名前の手をつかみ、持っていた団子を一つ食べる。
「原田さん!?///」
原「絶品だ。」
そう言って微笑む原田に名前は顔を赤くし、口をぱくぱくさせる。
原「顔が赤いぞ?」
少し意地悪そうに笑いながら頭を撫でられ名前は俯くことしかできなかった。
原「なあ名前。」
「はい?」
ゆっくりと顔をあげるとそこには優しい顔をした原田がいた。
原「またこうやって団子作ってくれるか?」
「えぇ、もちろんです。」
原「次は、二人きりがいいんだけどな。」
「え?」
永「おいこら!左之!俺は見てたぞ!なんで名前ちゃんに食べさせてもらってんだ!!!!」
平「え!?」
沖「は?」
斎「何?」
「え!?!?いえ、食べさせただなんてそんな…。」
原「こいつの持ってた団子、一口貰っただけだろ。」
平「まだこんなにいっぱいあるじゃん!自分でとれよな!」
沖「…名前ちゃん、僕にも食べさせてほしいな〜。いいよね?」
斎「総司の言うことは無視して構わない。自分で食べさせておけば良い。」
「えっと…。」
ぎゃーぎゃーと騒ぐ輪に土方の雷が落ちるのは時間の問題だった。
正座させられ(沖田を除く)説教を受けている幹部を見て、思わず笑ってしまう名前は。
また明日からもがんばろうと心に誓ったのだった。
終
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