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――ズボッ



何かを踏んだ音。
何かが落ちた音。


一気にいろんな音が聞こえた。

そしていつになっても風間の手が自分に触れることがなくて私は目を開けた。


風間はいなかった。
いや、正確には眼下にいた。














沖「あははははっ!こんなに簡単に引っかかるなんて鬼の頭領やめたほうがいいんじゃない?」



千「ふふっ。本当ですね。」




見事に腰のあたりまで地面に埋まった状態で風間は立っていた。



 「落とし穴?」


沖「まあ土方さんあたりが引っかかってくれないかなって思ってたんだけどね。おもしろいからいっかって。」


風「…貴様。」



 「ぎゃああ!めちゃくちゃ怒ってますよ!沖田組長!!!」


目隠しを外し、こめかみをぴくぴくさせながら風間がこっちを見ていた。
そりゃそうだよ、怒るに決まってるじゃん。




千「おもしろかったです。風間さん。私面白い人好きですよ。」



風「…素直にそう言えばいいものの。」



えー。
もう怒り収まってますけど。
どんだけ千鶴ちゃんのこと好きなんだよ。
そしてあの黒い千鶴ちゃんでもいいのかよ。


千「またおもしろいことをしてくれたら…ついていってしまうかもしれませんね。」


絶対嘘だよね、千鶴ちゃん。
ついていく気なんて微塵もないよね。


風間はゆっくり落とし穴から脱出すると土ぼこりを掃う。


そして私の目の前に立った。


風「貴様は何を望む?貴様の望むものは全て叶えてやろう。俺のものになれ。」


風間の手が顎に触れて思わず体が固まる。
すぐ近くに千鶴ちゃんも沖田組長もいるのに連れ去られそうな感覚に怖くなった。


 「嫌です…。」


風「ならば力づくで連れていくまでだ。」



風間の手が私の腕に移動する前に。



沖「それ以上その子に触らないでくれるかな?」



沖田組長の刀が風間の喉元に伸びていた。



風「何のつもりだ。」


沖「二度も言わせるの?それ以上その子に触るなって言ったんだけど。」


 「沖田組長…。」


沖「この子は僕のものだからね。」


そう言うと沖田組長は私を引き寄せ庇うように風間との間に立ってくれる。



嘘だ。
嘘だ嘘だ嘘だ。



だって沖田組長は。


いつも私をからかって。
いつも私で遊んで。
いつも私に意地悪して。



おもしろがってるだけだと思ったのに。




風「…ふん。次は必ず二人とも連れ帰る。」



そう言うと風間は塀を越えて去ってしまった。

こんなにあっさり帰ってしまうなんて変だ。


 「どういう意味ですか?沖田組長。」



沖「何が?」



刀を収めながら沖田組長は私を見る。
何がって。
さっきの言葉ですよ。



 「僕のものって。」



沖「だって僕のものでしょう?」



 「それって。」



沖「好きだよ。名前ちゃん。」



何これ。
なんなのこれ。

気が付いたら沖田組長の腕の中って何?




沖「ねえ、君は?」





 「…好きです。沖田組長。」






何だったんだろう。
今日はものすごい日だ。

黒い千鶴ちゃんとか。
変な風間とか。
甘い沖田組長とか。

こんな日ってあるの?

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