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たどり着いたのはさっきまでいた屋上だった。



 「改めて言うの恥ずかしいんだけど…。」


平「何だよ?」


私は俯いて話し始めた。
自分の気持ちも。
原田先生から聞いたことも。


 「平助、私のことが嫌いなわけじゃない…んだよね?」


一気に話をしたけど返事がない。
怖いけどゆっくりと顔を上げると目を丸くしたまま固まっている平助がいた。


 「平助?」


平助の顔の前で手をふって名前を呼ぶ。
すると我に返ったのか平助がやっと声を発した。


平「えっと…つまり…俺が何もしなくて不安になってたってこと?」


 「うん…って言わせないでよ。恥ずかしいから。」


平「そっか…。」


 「あ、でも原田先生に言われたからなんだよね?それ聞いたら大切にされてる気がした。むしろ悪い気さえしてる。私は自分のことしか考えてなくて…。」


平「そんなことないって!嬉しいというか!だってその…。」



平助が一瞬言葉を詰まらせる。


 「どうしたの?」


平「俺も同じ気持ちだし。」


そう言うと平助が私の手を繋いだ。
少し大きくて骨っぽい。男の子の手。
繋いだ手から熱が伝わってあたたかくなる。


平「お前と手繋ぎたいし、抱きしめたいし、その…き…き…///」


 「き?」


平「っ〜〜〜〜///」


 「もしかしてキス?」


平「!!!」


あ。そうなんだ。
平助、大丈夫?なんか倒れそうなぐらい顔赤いけど。


 「っくくく…。」


平「笑うなよ!!」


 「えへへ。じゃあチューする?」


ふふふと笑いながら上目遣いに平助を見ると彼は顔を赤らめたまま、だけど少しだけ目を細めて私を見た。


平「俺、左之さんに言われていろいろ考えて、我慢してただけで。」


 「ん?」


平「お前がいいなら我慢しない。」


 「え?」

そう言うと平助は私を引っ張ってぎゅっと抱きしめた。
包まれて体温が上がる。


すっと自分の頬に平助の手が触れて、ゆっくり持ち上げられるとキスがふってくる。

目元、頬、唇。

ふわりふわりと触れてなんだか心地良い。


 「ん…。ん!?」


そのまま移動した唇は首元をくすぐるように触れていたのに。
一瞬だけちくりと痛みが走る。


 「平助!?」


平「んー?」

私の声を軽く流してまた頬にキスをする。
そんな平助を押すように離した。


平「名前…?」


 「いっ…今!首!首に!!」


平「ん?」


 「ききき…。」


完全につけたよね。
ポケットから鏡をとって確認すると。

うん。
見事に赤い痕。


平「俺のものって印だろ?」


いつもの笑顔じゃない、少しだけ大人っぽい微笑みに私の心臓が爆発しかけた。


 「っ〜〜〜〜/////平助のあほ!へたれのくせに!!!」


平「な!なんでへたれなんだよ!お前の嫌がることはしたくないけど、お前が許すところまでならどこまでもしたいっつーの!!!」


 「どこまでも…!?変態!原田先生に言ってやる!!!」


平「Σやめてくれよー!左之さんに本気で殺される!!!」



チワワなんかじゃない!
チワワの皮をかぶった狼だったんだ!!!
何よそれ!
奥手で可愛い少年だと思っていたのにー!


私が少しだけ睨むと平助はぽんぽんと私の頭を叩いてあやす。


平「へへっ。睨んだって可愛いだけだって。」


 「…///」


平「名前。」


もう一度ゆっくり抱きしめられてキスをする。



平「水族館、楽しみだな。」


 「うん。」


平「手、ずっと繋いでよう。」


 「うん。」


平「こっそりキスしような//」


 「うん///」


平「…うち泊まりくる?」


 「却下。」


平「えぇ!?そこはうんって言ってくれよ!」


 「だめ。」



タイミング良く昼休み終了のチャイムがなり、私は平助をぼんっと突き飛ばし笑いながら屋上を後にする。
平助も慌てて追いかけてきて私たちは教室に近づくまで手を繋いで移動した。






そんな様子を見た土方先生に「廊下で手なんて繋いでんじゃねえ!!!」と雷を落とされ、放課後に罰として二人で掃除させられることになることを、この時の私たちはまだ知らない。






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