「あ、そう。」


「でさ、でさぁ〜まじ可愛いんだって!」


「ふぅん。」


私は今、聞きたくもない平助の恋愛話とやらの相談を受けている。


「って、お前ちゃんと聞いてんのかよ!」


「……聞いてる、聞いてる。声掛けたらいいじゃん。」


「掛けられるかよ!急に話しかけたりしたら、変に思われるだろ?」


「一目惚れしました。って言えばいいんじゃない?」

「んなっ!?!////い、言えねぇ!!!」


真っ赤になって頭を抱えた平助に、私はため息をついた。

何で、好きな人の恋愛話聞かなきゃなんないのー!

だけど、平助を放っておけないのも事実。
それと、気になるってのが本音。


早く失恋しちゃえ。とか思ってしまう私、最悪だ。


「はぁ……」


と、私が机に突っ伏したと同時に声が掛かった。


「名前ちゃんさぁ……はっきり聞きたくないって言ったらいいのに。」


「…言えるわけないじゃん。気になるし。」


「鈍感男を好きになっちゃうと大変だね。」


ポンポンと突っ伏したままの私の頭を叩くと総司はそのまま私の前に座った。


「ちょっ!しー!////」


「大丈夫だよ。」



平助に聞かれるんじゃないかとキョロキョロした私に可笑しそうに総司は笑う。


「今は一くん捕まえてるから。」


「……そっか。」


これは一ヶ月前に遡る。
朝一緒に登校中、ある駅で平助が呟いた一言。


「やべぇ。俺、惚れた。」

「……は?」



目線の先には、綺麗な長い髪のふんわり笑った女の子が居た。



「まぁ、確かに可愛い子だよね。……女の子らしいし。」


「何で私、見てんのよ。」

「ん?別に。」


「どうせ私は女の子らしくないよ。」



「何言ってんだよ!名前も実は可愛いとこあんだぜ!」


「うわっ!へ、平助何時から!?」


「今だ。」


「一、平助!びっくりするから急に話に入んないで!!」


「…大丈夫だ。」


「な、何が!」


クスリと笑った一に何か悔しい。
鋭いこの2人は直ぐに私のキモチに気づいた。
一なんかは黙って見守っててくれたりするんだけど、問題は総司で。


「ねぇ、ねぇ平助。その名前ちゃんの可愛いところってどこ?」


「ちょっと!」


「そうだなー。先ずは、楽しそうに笑うところだろ?飯旨そうに食うところだろ?それに意外とすぐ照れたり………ははっ、もう赤くなってやんの!」


そりゃあ……好きな人にそんなこと言われたら、私だって…


「う、うるさい!///」


笑いながら私の頭を小突く平助の手を精一杯払い除けた。
こういうところが女の子らしくないのかな…。

一瞬曇った私の顔を見逃さないのが一で、


「俺はお前らしくていいと思うぞ。」


って呟いてくれた。


「……ありがと。」


「あぁ。」


でも私、知ってるんだ。密かにあの子も平助の事見てるんだよ。

私が一言そう教えてあげればきっと2人は晴れて恋人同士になれる。


――言えない私は友達失格だよね……平助。



そして、私にとっての失恋の日は案外早く訪れた。


それは何時ものように平助と総司と3人で登校中。
あの子が真っ赤な顔して平助に話しかけた。


内心あぁ、ついにこの日が来ちゃったか。とどんどん苦しくなって泣きそうになる私の手を総司が引いてくれた。


「お邪魔みたいだし、僕達先に行ってるね。」


「おい!総司!」


総司に手を引かれるまま私は平助の顔なんて見れなかった。


だから、その時平助がどんな顔してたかなんて私が知るはずもなかったんだ。


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