『きゃ…くすぐったいから…』

今日は非番だし名前とゆっくり過ごそうかと思っていたのに。とんでもない邪魔が入った。

『平助ー!見て見て!肉きゅう!』

名前が大事そうに抱いているのは何処にでもいる普通の、別に大して可愛くもない、普通の猫。その普通の猫が庭を掃除していた名前になついたのが始まり。
名前も可愛い可愛いと一日中構ってやっていた。

「…その猫のせいで何処にも行けなかったじゃねーか」

『こうやって部屋で三人で遊んでるんだからいいじゃない、ねー?』

にゃー

「…俺は遊んでねえし」

『ん?』

名前は猫に夢中で俺の方なんて見やしない。この不細工な猫が名前を取ったんだ。

『平助もさ、撫でてみない?』

「やだ」

『どうして?』

「嫌だから」

なんで俺がこんな奴を撫でなきゃならないんだ。
俺は名前に背を向けて畳に横になる。後ろから聞こえる猫の鳴き声が更に俺をイラつかせた。
もういい。
名前なんか勝手に猫と遊んでろよ。


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ふと意識が戻ると外はもうすっかり暗くなっていた。
ああ…ふて寝とか言うやつをしてしまったのか。名前の声も、普通に可愛くない猫の声もしない。とりあえず、ずっと同じ大勢できつくなった体を解そうと、上体を起こす。
すると、となりで小さなうめき声が聞こえた。

『ぅ…ん…?』

「名前…?」

俺の背中にぴったりと寄り添って寝る名前。猫はいつの間にか居なくなっていて、部屋には俺と名前、二人きりになっていた。


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