「名前、名前っ!!」

「う、なに、朝から・・・ねむい」

ひんやりとした部屋の空気に身体を震わせて、もぞもぞと布団にもぐりこんだ。

「外!!」



夢の外へ



部屋の中でさえ吐く息が白い。

結露した窓に、きゅ、と音を立てながら指で線をひいてみる。

半透明な窓からは外の景色が見えないけれど、白く色づいているのに気付いて、私も顔をほころばせた。

「うそっ積もってんの!?」

にんまり笑った平助が、ガチャリと窓を開けてくれた。




コートとマフラー、手袋にブーツ。完全装備をした私の腕をひいて家を飛び出した。

「ほら早く!」

「わ、待ってっ」

扉を開けると、きらきらと輝いた雪が眩しくて思わず目を細めた。

降り積もったばかりで、誰の足跡もないそれは、真っ白な絨毯みたい。

足を踏み出せば、ぎゅ、と音がする。

「きれい・・・」

足首程の高さまで積もった雪の上を、手を繋いだ平助と一緒に一歩ずつ踏みしめる。

「こんなに積もってんの、初めて見た」

「私も!」

二カッと笑った平助の、その子供みたいな笑顔が、好き。

それに見惚れてしまった私は、歩き慣れていない雪の上で足をもつれさせて転んでしまった。

「う・・・・冷たい〜」

「あははははっ、だせぇの」

「ひ、ひどーい!!」

ほら、と転んだ私に手を差し伸べて立ち上がらせてくれた彼を、頬を膨らませて睨んでみれば

私のコートについた雪を払いながら、寒さのせいではないらしい、染まった頬をふい、と逸らして呟いた。

「ばか、違ぇよ」

「?」

「・・・・・・いつもさ、恥ずかしくて言えねぇけど」

「わっ」

ぴた、とお互いの冷えた頬が重なった。

抱き締められて身動きが取れない私は、じんわりと伝わってくる体温にドキドキと胸を高鳴らせる。

「名前は、すっげぇ可愛い」

「ちょっ・・・・・・」

普段あんまり真面目な話とかしないし、言葉にすることも少ない。

「だから、さっきのは愛情の裏返しっつーか」

言い訳するみたいに、ちょっとだけふてくされた様なその声にも、ドキドキする。

耳元に寄せられた平助の、囁くような声が、告げた。



「ちゃんと、お前の事好きだから・・・・・・心配すんな」



たまにくれるその言葉が、嬉しい。




「・・・・・・ありがと」





雪よりも先に、私が溶けそう。




END



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