―次の日―







『今 別れの時 飛び立とう 未来信じて

はずむ 若い力 信じて

この広い この広い 大空に』





中学のときもこの歌だった。

けれど何度歌ってもいいものはいい。

涙腺が緩い私は『旅立ちの日に』を歌っているだけで涙が出そうだった。

総司はそんな私の方を見てニヤニヤと笑っている。

こっちを見るな、前を向いていろ。

…と思ったけれど、私は総司に倣って平助の方を見てみた。

総司と違って真剣に歌ってるよ。

うん、偉い偉い。

ついでに一君も…当たり前だけどちゃんと歌ってる。

このままじゃ私は総司と同類じゃんって思って、慌てて前を向いて真剣に歌い始めた。






「――卒業生、退場」






歌が終わって、閉式の辞の後、

音楽が流れるとともに私たち三年生は体育館から退場した。

そのまま流れに沿って教室に戻り、担任から卒業証書を受け取ったり、例の紅白饅頭を配られたり。

例のってどの例だ。





「本当におまえらは手の掛かる生徒だったな。まぁ、今となっちゃいい思い出だ。卒業しても遊びに来いよ…以上っ」




担任の土方先生は短くそう言って「解散」と言った。

こういうときにそれらしい言葉を長々と言わないのは土方先生らしいと思ったけれど、心なしか少し声が震えていた気がする。

卒業式は普段では絶対に見れないようなあの人のあんな姿を見られる…なんて日でもあるからね。

総司はそんな土方先生の姿が面白いからなのか、携帯でこっそり写メってるし。





そして、解散と言われたクラスの皆は、それぞれが友達や先生、部活のメンバーだったりと別れを惜しむために散り散りに。





「名前!大学生になっても遊ぼうね!絶対だよ!」

「藤堂君とお幸せにね!」

「何かあったらいつでもメールしてよ!」




私は平助のところへ行こうとするも、仲の良かった女の子たちに捉まった。

さっきから平助のことばかり考えてたけど、確かにクラスの子への挨拶も忘れちゃいけないよね。

これからしばらく会えないだろうって子もたくさんいるんだし。

そう思ってクラスの友達と高校最後の会話をしていれば、そこへ平助がやって来た。






「名前、俺たち剣道部の後輩から呼ばれてるからちょっと剣道場行って来るな!友達との話終わったらこっちまで来てくれ!」

「あ、うん。分かった!」




『俺たち』と言うから平助の少し後ろを見やれば総司に一君もいた。

その場で一緒に行くと言ってもよかったのかもしれないけれど、友達との別れも大切だからね。

平助とはまたこれからも会えるんだもん。今はこっちが優先だよね。



















「それじゃあね。また会おうね、名前!」

「うん!皆も元気でね!」





平助たちを見送った後、10分くらい友達と喋って。

他にも部活だとかで行かなきゃいけないところがあるらしい子もいたから、後ろ髪を引かれる思いになりながらも解散。




だから私は卒業証書と紅白饅頭を忘れずにしっかりと鞄に詰めて。

一年間色々なことがあった思い出のたくさん詰まった教室に心の中で別れを告げてから剣道場へと向かった。


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