「わっり、遅くなっちまった!しんぱっつぁんの話が長くってさ」

「おかえりー。随分長かったね?なんの話だったの?」

「名前、聞いてくれよ!それがすっげーくだらねーの!なんか大事な話なのかと思えば、おまえは後先考えずに行動するから大学ではもっと落ち着けだとかなんとかさ。競馬やってる人に言われたくねーよな」

「あはは。くだらなくはないと思うよ。最もなことだよ、それ」

「しかしまぁ、平助の気持ちは分からないでもないな。他の先生に言われていたならば素直に納得できただろう」

「あはははは!一君、結構ザクッと言うね」




第二ボタンの話の後しばらくして戻って来た平助。

平助を可愛がっていた永倉先生なりの餞の言葉だったんだろうとは思うけど、長話に付き合わされた平助に私と一君は少し同情した。

総司はただケラケラと笑っているけれど。




それはそうと。

平助も戻って来たことだし、私たちは鞄を持って教室を出る。

特にこの後何かがあるというわけではないのだけれど。

卒業式前に四人で一緒に帰れる最後の日だしなんとなく…

本当にただなんとなく一緒に帰ろうみたいな雰囲気になったんだよね。





私は自然と平助の隣に行って、一君と総司はその後ろを歩く。





隣を歩きながら何気なく平助の横顔をちらりと見やってみた私。

うん…やっぱりカッコいい。

近くにいすぎるせいで気が付かないけど…モテないわけがないよね。




そんなことを考えながら平助の横顔を盗み見ていると、不意に平助が私の方を向いてきたからバッチリと目が合ってしまった。

私は恥ずかしくなって慌てて目を逸らすんだけど、それはもう手遅れ。





「な、なに…///俺の顔になんかついてる?///」

「そんなんじゃないよ///ただちょっと見てただけというか…///」




付き合って長くない私たちだからなのかは分からないけど、目が合うだけでいつも照れてしまう。

普通に話してるときは大丈夫なんだけれど、ふとしたときに目が合うのに弱いんだよね。私も平助も。





「ねぇ、一君。この子たちどうして僕らの前でときめきあってるわけ?メモリあってるわけ?唾でも吐きかけられたいのかな」

「総司。こういうものは見て見ぬふりをするのが一番だ」

「見て見ぬふりって…こんな目の前でメモリあわれてるのに?」

「なっ!メモリあうってなんだよ!そんなことしてねーっつーの!」

「目が合うだけで照れるなんて、いまどき中学生でもそんな恋愛してないってば」

「うるせー!」





総司と一君にはからかわれ慣れてるから私はもう気にしないことにしてる。

ウブなのは今に始まったことじゃないし、直そうと思って直せるものじゃないんだもん。

平助は相変わらず総司に突っ掛かっているけど、私はその傍らでさっきの第二ボタンのことばかりを考えていた。

どうやって他の女の子たちの魔の手から死守しようかな、なんて。





「あ、そうだ」




私はあることに気が付いてぽつりとそう呟いていた。

そうしたらすかさずに総司が「どうしたの?」って。

この人は本当に小さな呟きも聞き逃さないから怖い。





「予約しちゃえばいいんだよ!平助の第二ボタン!」

「は?俺の第二ボタンがなに?」

「えー、それってズルなんだー!名前ちゃん」

「いいじゃない!私は平助の彼女なんだから!」

「まぁ、それが一番確実だとは思う」





話がさっぱり見えてない平助は首を傾げている。

それはそうだよね、さっきいなかったんだもん。

総司にはズルだって言わてるけど、一君は私寄りの考えみたいだし気にしない気にしない!




「明日、平助の第二ボタンを私に頂戴!」

「えっ?あ、うん…///別にいいけど…///」

「やった!これで明日の心配はもうなくなった!」




平助も第二ボタンをくださいって言われるのがどういうことかは知っているんだと思われ、頬を少し赤くしながら頷いてくれた。

総司は相変わらず「面白くなーい」だとか言って膨れてるけど、あんたは私に一体何を期待してるんだ。




でもいいんだもんね!

彼女なんだから無条件で第二ボタンが貰えるのは当たり前のことじゃない!




これで明日は心置きなく卒業式に参加することができるよ!


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