「……なぁ…///」
『分かってる。分かってるから何も言わないで///』
どういうつもりだ沖田総司。選りに選ってなんでこの場所…。
私達が隠れてる木の後ろ。その茂みからは如何わしい声が物凄く漏れている。
そういう事は家でやろう。この寒さで素っ裸は……待てよ。
服ってどのタイミングで脱ぐの?そもそも脱ぐの?脱がしてもらうの?それ以前にこの人達のやってる事が本当にできるの!?
「────い──、おーい名前、戻ってこーい」
『Σはっ、ごめん何!?///』
イメージを膨らますのに必死だった私の耳に平ちゃんの声が遅れて届いた。
「まぁ気持ちは分かるけどさ…。総司達行っちまったけどどうする?この時間じゃあ帰ったんだと思うけど」
『え?あ、ちょっと待って。…………そうだね。帰ったんだろうね。』
時間を見るふりをして開いたケータイにはメールが届いてた。
本文には一言【何回したか教えてね♪】の文字。
「…? だったら俺達もそろそろ帰ろうぜ。うわっ、お前の手スッゲー冷てぇじゃん!ほら、っこれ巻いとけよ」
私の首に巻かれたマフラーから平ちゃんの匂いがする。私の大好きなその匂いは、胸を心地よく締め付けた。
『あっ…ありがと…///でも平ちゃんが』
「俺は平気だって!名前の手、握ってるから暖かい」
『! …私の手、冷たいよ』
「そうだけど…なんか暖かくなる」
そう言って指を絡ませると優しく手を引いた。私やっぱり……この人が好きだ。
誰よりも傍にいたい。もっと近づきたい。そう思う事は間違ってないはず。
家に着くまでの間、身に纏う寒さはあまり感じず、なんだかすごく胸が暖かかった。
――――――――
―――――
「お、俺は床で寝るから、お前ベッド使えよ!///」
『…………嫌です///』
「"嫌です"ってなんだよ…」
どうしたらいいの?どうすれば伝わるの?
言葉なんて何も口に出せない。
私はベッドに腰掛けたまま平ちゃんの手を握って力の限り引き寄せた。
「おわっ…!なんだよ突然、危な───まさかお前……一緒に寝ようとか…思ってないよな…!?」
『……思っちゃ悪い…?///』
「っありえねぇし!!///お前な!一晩同じ部屋で寝るってだけでも相当我慢してるんだぞ!?なのにその上"一緒に寝る"!?お前は鬼かっ!!」
『!! 我慢…してるんだ…?///』
「っ!!/// あ、だからその……っ、名前。俺さ、お前の事すっげー好きで…本当に大事にしたいと思ってるんだ。だから…そういう事するのは…、もっと後でいいと思ってる。俺と名前はこれからもずっと一緒にいるんだし、焦る必要なんかねえだろ?」
『平ちゃん……』
"なんでキス止まりなんだろう"ってずっと悩んでた。"本当は他に好きな人がいるんじゃないか"とか"手を出したい程じゃないのかな"とか…。
勝手に不安になって勝手に悩み込んで…なんか私だけ子供みたい。
嬉しいけど少し悔しい。そんな想いから俯いた私を平ちゃんが覗き込み、柔らかくキスをする。
「名前、愛してる。お前の事誰よりも大事にするから、ずっと俺の傍にいてくれるか?」
『っ────』
もう…………
『───いい加減にして…!』
「っ名前…!?」
気が付いたら平ちゃんをベッドに押し倒してた。多分ちゃんと言わなきゃ伝わらない。私は大きく開かれた瞳を睨み付ける。
『平ちゃんは良くても私は良くない!!もっと近付きたいのに……、もっと傍にいたいのになんで逃げるの!?』
「っそんなつもりじゃ──!?名前…」
自分でも何を言ってるのか分からない。けど涙がボロボロ零れ、平ちゃんの困ってる顔がぼやけて見えた。
「もしかして俺……お前の事、不安にしてたのか?」
『…っ…平ちゃん…ごめ…』
「お前は謝んなくていいって。俺の方こそごめんな。でも名前がそんなに悩むんだったら………俺のものにしてもいい?」
優しく抱きしめながらそう囁いた平ちゃんは耳まで真っ赤だ。"きっと私も同じなんだろうな"と思いながら、腕の中でゆっくり頷いた。
――――――――
―――――
「…………///」
夢じゃなかった。目が覚めた俺の腕の中には、まだ寝息を立ててる名前がいる。
……なんかすっげー恥ずかしいんだけど///
『んー──…』
あ、寝言言ってる。やべぇ、可愛い///
昨日までとは違う想いが俺の中に芽生えた。名前の事、もっと大事にしたい…。もう不安になんてさせねえから…、だから…、一生傍にいてくれよな。
そろそろ起こした方がいいかな?でも今日は特に予定もないし、もう少し寝かせてやろう。
俺は名前をもう一度しっかり抱きしめ、大好きな匂いを包み込んで再び目蓋を閉じた。
end
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