沖田side


「あ、一君。名前ちゃん達がもうこっちに向かったらしいんだけど準備できてる?」



「総司…………本当にやるのか」



ケータイの向こうから聞える一君の声は今にも死んじゃいそうな程か細かった。



「当たり前でしょ、今更辞めるだなんて言わないでよね。」



「っ……男に二言は無い。しかしこれはあまりにも…!」



「あー。僕って正直者だからー、一君が土方さんに嘘吐いて部活休んでバイトしてた事を言っちゃいそうだなぁ。」



「!! わ、分かった!!あんたの言う通りにする!……だが今回だけだ、いいな?」



「ありがとう一君。君ならそう言ってくれるって信じてたよ。でもまさか、バイトの理由が土方さんへのプレゼントを買う為だなんて…」



「Σ総司!!その事は他言無用だ!!///」



「はいはい、分かってるよ。それじゃあ後でね」



「……ああ」



一君の土方さん好きは理解できないよ。あんな口煩くて腹黒い人のどこが尊敬できるんだか…。
そんな事を思いながら家を出た僕は辺りを盗み見て、二人の姿を確認してから待ち合わせ場所へ足を向けた。



――――――――
―――――



「…………。」

「………何も言うな。」



ウィッグにメイクに綺麗目の服



を着た一君が僕の目の前に立っている。



「Σ────っはははは!!」



「煩い!!笑うな!!///誰のせいだと思っている!!」



「ごめんごめん!違和感も無いしあんまり可愛いからつい…」



「……誉めているとでも思っているのか」



「僕はそのつもりだけど?」



「…………。」



あーあ、怒っちゃった。千鶴ちゃんにも見せてあげたかったなー、可愛い一君を。
あ。後でこっそり写メ撮ろっと。
だけどこれだと、平助は絶対女の子だって思うだろうね。後は適当に時間を潰してればいいんだっけ。どこに行こうかな?



「一君、どこ行きたい?」



「俺に聞くな。……だが人目に付かない場所が好ましい。」



「! 君って意外と大胆だね」



「大胆……?っそういう意味では無い!!勝手に誤解するな!!」



「冗談だよ。ほら、あんまり大声出すと平助にばれちゃうから大人しくして。"女装趣味がある"って学校で噂にでもなったら大変でしょ?」



「っ!?それは困る…。」



最初は面倒だなって思ってたけど、これはこれで面白くなってきた。
僕達はご飯を食べた後、一君の注文通り人目に付きにくそうな映画を見て、人通りの少ない公園。つまりカップルとかが忍んでそうな、そういう公園で時間を潰す。
平助にもいい刺激になったんじゃないかな?
僕は平助達から死角になるように名前ちゃんへ作戦終了のメールを送った。


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