『平ちゃーん、明日おばさん達いないんだよね?泊まりに行ってもいい?』
「っ──!?」
昼休み。体育館の裏で一緒に飯を食ってた名前がいつも通りの笑顔で俺にそう告げた。
「だ……駄目だろっ!!まずいってそれは!!///」
主に俺がまずい。一晩中こいつと一緒にいて何もしない自信なんてねえし…。
それに俺は名前を本当に大事にしたいんだ。いくらこいつの嫌がる事はしないって心に決めてても、もしそうなった場合に理性が利くかどうか分からない。
だから今はまだそういう雰囲気になりそうな事は避けねえと───。
『どうしても駄目?実は平ちゃんにちょっと相談があってさ…。』
「相談…?」
さっきまでの笑顔が沈んだ表情に変わる。そういや最近よく溜め息を吐いてたけど、やっぱなんかあったのか?
こいつがこれだけ真剣に悩んでんのに、何考えてんだよ俺は…。
「俺にできる事ならなんだってするから遠慮なんかするなよ。…つうかさ、相談なら今すればいいんじゃねえの?なんでわざわざ泊まる必要があるんだ?」
『それがね……』
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「はぁっ!?総司が浮気!?」
『ちょっと!声が大きいって!』
俺は慌てて口を塞ぎ、周りに人がいないのを確認した。
「でもどう見たって総司は千鶴一筋だろ?なんか疑うような事でもあったのか?」
『…うん。最近ね、毎週土曜日の夜はほとんど連絡がつかないらしいの。千鶴が後で本人に聞いても、"寝てた"とか"友達が来てて気づかなかった"とか言われるんだって。それが1、2回ならまだしも、先月からずっとだよ?』
「それは……怪しいな。ったく、なにやってんだよ総司の奴…」
総司とは部活が一緒だし庇ってやりたいけど今聞いた限りじゃかなり"黒"に近い…多分。
『でも私は別れさせたい訳じゃなくて、もし本当に浮気してるんなら止めさせたいだけなの。だけど証拠がなかったら沖田君を問い詰めたりできないでしょ?あいつ口が上手いから…』
「まぁ……あの土方さんを弄るんだから確かに手強いよな────!って事は…」
『そう。土曜日の晩、沖田君を尾行して確たる証拠を掴む!もし途中でバレた時は、デートしてたって事にすればいいし…。だからお願い!可愛い千鶴の為だと思って手伝って!』
「……なぁ、お前が最近悩んでたのってこの事?」
『っ!?……まぁ…』
「なーんだ!そういう事なら早く言えよ。ずっと気になってたけど、お前が何にも言ってこないからさ…。これでも心配してたんだぞ?」
『そうなの!?……なんかごめんね』
「謝んなくていいって!そんじゃあ千鶴じゃなくて、"可愛い名前"の為に手伝ってやるか!」
『っ!?///』
「………///」
『自分で言っといて照れないでよバカ///』
「べ、別に照れてねえし!!///」
俺達は昼休みの終わりを知らせるチャイムが聞えるまで顔を赤らめたまま作戦を練っていた。