ポツリと寂しそうに呟く名前に藤堂の表情が変わる。
藤「そっか…。もうそんなに日が経ってたんだな……分かった。煮るなり焼くなり好きにしろよ!」
「うん。……私さ、元の世に戻った日から毎日寝る前に願ってたんだよ。もう一度平ちゃんに会いたいって…」
藤「!名前……」
「だからまたこっちに来れた時は本当に嬉しかった。
でも……結局また離れるなら来なきゃ良かったかも。一緒にいられないって分かってるから余計辛いだけだし」
泣き出しそうな笑顔で誤魔化しながら藤堂を見ると、自分を見つめる真っ直ぐな目と視線がぶつかった。
藤「名前、縄解いてくれよ。逃げ出したりしないから」
「…………」
言われた通りに縄を解くと、自由になった藤堂の腕が名前を包み込む。
「!///平ちゃ『なぁ、一つ頼んでもいいか?』──何を…?」
少しだけ体を離して顔を覗き込む優しい目に名前の心臓がうるさく鳴り響く。
藤「俺を探して欲しい」
「……え?」
藤「俺は絶対名前のいる世に生まれ変わってみせる。だから…あっちに戻ったら探してくれねえか?
もし出会えたら……俺はお前とずっと一緒にいる」
名前の髪を撫でる手がやけに温かく感じた。
「……本当?」
藤「本当。だって俺も名前ともっと一緒にいたい。だから……今はちょっとだけ離れよう、な?」
「平…ちゃん…」
藤「ほら泣くなって。心配すんなよ、きっとまた会える。つうか本気で探してくれよ?俺は覚えてないだろうからさ」
「血眼で探すから大丈夫」
藤「Σそれ怖えって!普通に探せよ!……約束だからな────」
そう言って藤堂が重ね合わせた唇はすぐに離れ、きつく名前を抱きしめた。
「…平ちゃんが男だ…///」
藤「あー煩い煩い!!///さっさと寝ろよ!///」
「ふふっ……くくくっ」
藤「……笑うな///」
「ごめんごめん。
平ちゃんありがとう。皆にお礼言っといて?」
【ありがとう】と言う言葉を聞いた時に見せた藤堂の悲しげな表情を名前は知らない。
藤「……分かった。名前──おやすみ」
「うん…。おやすみ平ちゃん」
―――――――――――
藤「…………やっぱ戻っちまったか…」
布団の空いた空間を見ながら呟く。どうやら相当凹んでいるらしい。
藤「こんなんじゃ名前に笑われるな…。よし!」
着替えを済ませると空元気で広間へ向かった。
藤「おはよー!」
永「!どうしたんだよ平助?やけに元気いいじゃねえか」
神「…あれ?名前ちゃんは?」
藤「…………自分の世に戻った。皆にお礼言っといてくれってさ」
気合いを入れたはずがみるみる悄気ていく藤堂に広間も寂しげな雰囲気に変わる。
原「落ち込んだって仕方ないだろ。名前が見たら笑われるぞ?」
藤「別に……落ち込んでなんか『あーっ!!』Σっ何だよ総司!脅かすなって」
沖「神威ちゃん!(ヒソヒソ)」
神「え────Σ本当だ!何?そういう事!?///」
沖「そういう事だろうね」
斎「何がそういう事なんだ?」
ヒソヒソ話が逆に思いっきり目立っている二人に注目が集まる。
神「藤堂さん……そ、それは……そういう事…?///」
沖「駄目だよ、野暮な事聞いちゃ」
原「お前ら何の事を言って……お前も結構やるじゃねえか平助」
藤堂を観察して理由が分かった原田がニヤッと笑うな。
藤「はあ?皆何の事を言ってんだ?」
全く検討が付かない藤堂に神威は手鏡を渡し、自分の首筋をチョンチョンと触る。
藤「?首がどうか…………Σ名前ー!今度会ったら覚えてろよー!!///」
名前は眠っている藤堂に紅い印という置き土産を残していた。
君とまた会えます様に──
end (・∀・)ノシ
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