読者の皆様こんにちは!
私達今、絶賛修学旅行中です!
2日目の今日は京都自主プランなんですけど、
さっき歳坊の引くくらい長い説教をくらって他の班より遅いスタートを切ったんですけど、
すでに絶賛迷子中です!
「マジでさ、毎回思うけど地図って全ッッ然分かんない!」
京都駅から10分ほど歩き、良さげな道に出たところで私達はここが何処だか分からなくなり、立ち往生していた。
「よく女の子は地図読めないって言うよね。
でも名前の場合はただ単に脳が無いだけだから、女らしいって勘違いして喜んだら斬るよ?」
「千鶴や、あたしゃあの男が怖いよ……!」
さて、一君のシンキングタイム用にベラベラと話していたんだけれど。
一君は地図をくるくると回しながら眉間に皺を寄せて、一度大きく頷いた。
「一君分かったのー?」
「大体の道順は把握した。」
「さすがっす!イケメンっす!」
「でもよー一君、この道見ろよ、Y字どころか4又くらいに分かれてんだけどさ、どれ通んの?」
「………どれを通っても大して変わらんだろう。」
「んーん、一君。それって爆弾の時限装置の赤か青かどっちかのコードを切ったら爆発しちゃうって場面で、どっち切ったっていいだろうって言ってるようなモンだよ?」
「例えブッ飛んでんな、おい。」
「あるドラマでしたら更に奥のピンクのコード選ばないと駄目でしたよね。」
8つの目が一君に"どれ通るの?"と問いかける。
「…………誰かに聞いてみる事にする」
「賢明、うん、賢明。」
「ちぇーつまんねーの。RPGぽくなってきたなって思ったのにー。」
ぶー、と口を尖らせた平助は子供そのもの。
精神年齢が幼いって言ったらありゃしない。
RPGなら今までも縦に並んであるくべきだったのだ。
「なら一君は関西弁で聞くべきだよね。」
総司の翡翠色の瞳がギラリと光り、一君を捕らえる。勿論いやらしい笑みを浮かべて。
「!……何故だ。」
「そーだよ一君!関西弁だよ関西弁!
だってさぁ、私達は今マイノリティだよ!?
マイノリティの権利を尊重するのは大切だけれど、郷に入っては郷に従え、マイノリティも少しはそのコロニーの特性に適応すべきだよ!」
「名前はマイノリティって言いたいだけだろー」
「だってカッコよくない?マイノリティ!」
「頭良い人みたいだったよ名前ちゃん!」
「ふぇっ、千鶴が"まぁいつもはどうしようもない馬鹿だがな"って黒い事考えてるぅ…」
「そ、そんな事ないよ!名前ちゃんのそういうトコ好きだよ!」
「「「………」」」
私は可愛い千鶴の言葉の暴力で些かへこんだ。
自分で仕掛けたとはいえ確実にダメージを受けた。
「………名前の言う事も一理あるかもしれんな…。」
「えっ?」
「意固地にマイノリティを主張するだけではなく、その社会に適応する事も大切だな。」
一君は二、三度こくこくと頷く。
つまり関西弁使ってくれんの?
総司も平助も千鶴でさえも口をおさえて笑っている。
誰か助け船出してよ。
「が、頑張って道聞いてね…っ!」
「ああ。」
一君はにこりと笑うと、道行く気の良さそうなおばさんに声を掛けた。
私は慌ててクソ真面目君観察隊の方へと移動する。
「すみません、此方に行くにはどの様にすればよろしいですか?」
「ああ、この一番右の道をずーっと真っ直ぐ行って、突き当たりを左、その後道路を横断して左に曲がればええよ。途中で大きな看板があるから分かる思うで。」
「分かりました、ありがとうございます。」
「修学旅行?楽しんでな〜」
「…おおきに。」
「「「「!!!」」」」
…おおきに。
…おおきに。
…おおきに。
頭の中でぎこちないおおきにがグルグルと回る。
「一君のおおきにゲットなりよー!!おおきにー!!!」
「おおきにー!」
「おおきに。」
「斎藤さん、良いおおきにでしたよ!おおきに!」
「なッ、あんたらが関西弁を使えと言ったのではないか!」
「総司さん、どうする?お赤飯炊こうか?
一君のおおきにヴァージン奪っちゃったよ。」
「そうだね、とりあえず乾杯でもする?暑いから僕喉渇いちゃった。」
「俺冷てーモン飲みてえ!」
「かき氷なんかも良いかもしれないですね!」
よし、マップで冷たいもの飲めるトコを探そうと思っていると一君の止めが入った。
「それは予定に入ってないが。」
「固い事言うなよなー一君。神社仏閣は待ってくれるけど喉の渇きは待ってくれねーんだよ!」
「今日は気温・湿度ともに高いですからね。水分は沢山取るべきですよ。」
平助は兎も角千鶴のご尤もな意見に一君は眉を顰めた。
…なんだろう、一君が正論なのに間違ってる事言ってるみたい。
班長って大変だな。
「……それが終わったら直ぐに目的地に向かうぞ。」
「やったー!!一君やっさし!」
自主プランが始まってちょうど一時間強。
未だ京都駅から徒歩圏内にいる私達の自主プランは果たして上手くいくのだろうか、いや、いかない。