「なんか薬屋が多い国だなぁー」
旅の途中で立ち寄った石田散薬国は名物が薬らしい。
国の名前に【薬】って付いてる辺りからしてそうなんだろう。
とにかく宿屋を先に探そうと歩き回り、やっとの思いで泊まれる宿屋を見つけた。
宿「お客さんも舞踏会目当てかい?」
「え?舞踏会があるんですか?」
宿「おや、違うのかい?今夜は年に一度の舞踏会があるんだけど、そこで王子様の花嫁を決めるらしいんだよ!
お客さんも独身なら行ってきたらどうだい?独身の女性なら誰でも入れるからね!
あたしも昔は石田のマドンナと言われたものさ!街を歩けば男は皆あたしを振り返ってry」
(おばちゃん、あんたの武勇伝はどうでもいい。でも舞踏会かー、懐かしいなぁ。それに美味しい物とかあるかも!)
私はたった一枚だけ持ってきていたドレスを着て、ご馳走目当てで行く事にした。
─お城─
「わぁー!凄く綺麗!!」
大広間は大きなシャンデリアで眩い程の輝きを放っていた…
ご馳走達が。
「こんなに綺麗な料理、勿体なくて食べられないよ!いただきま〜す☆」
私が全種類制覇を目指していると突然ラッパの音が鳴り響き、この大広間に続く階段の扉が開いた。
女「キャー!クーデレ王子よ!///」
女「写真で見るよりもずっと素敵ー!!///」
(クーデレとは何ぞや…)
初めて聞いた言葉に海老を頬張ったまま王子に目をやると、黒の衣装を身に纏った王子は気だるそうに集まった女達を見渡している。
(うわ、見るからに嫌々じゃん。さて、次は何を食べようかな〜♪)
私は王子なんてそっち退けでご馳走を見渡していると周りの女達から悲鳴にも似た声が響き、辺りを見回した。
(Σえ!なになに!?)
斎「その料理は美味いか」
「Σブッ!は、はひ!?」
声に振り返るとまさかの一王子が立っていて、驚きの余り私は王子の顔面に海老を吹きそうになった。
一王子はそんな私の口から出ていた海老の尻尾を取ると優しく笑いながら再び問いかける。
斎「美味いか?」
「は、はい!凄く美味いです!Σハッ、美味しいです…///」
そう言うと一王子は嬉しそうに口元を緩ませ、私に手を差し出した。
斎「俺と踊ってくれないか?」
「え゙。……あはい」
元々ダンスが得意だった私は深く考えずに手を取り、導かれるまま大広間の中心へ出た。
斎「あの料理は俺が作った。それをあんたがあまりにも美味そうに食べていたのでつい声をかけてしまった。…迷惑ではなかったか?」
「Σいえ!って王子の手作りですか!?すっごく美味しいから一流の料理人だと思ってました!」
ダンスをしながらご馳走に感動した私が褒め称えると、一王子は目を細め更に嬉しそうな顔をした。
斎「あんたはダンスが上手いな。もしや他所の国の姫ではないのか?名は何と言う?」
(Σヤバい!ここで正体がバレたら継母に知られる!)
「あの!私そろそろ帰ります…」
斎「!それは何故だ?何か気に障る事でも言ったか…?」
悄気る一王子が可愛かったが萌えてる場合じゃない。
「違います!その…じ、時間が……とにかくご馳走様でした!」
斎「待て!俺はあんたの事が知りたい!」
一王子の声に振り返る事なく、私は宿屋へ逃げ帰った。
「あー、ビックリした。明日も早いしもう寝……あれ?イヤリングが無い!!」
お母様の形見であるイヤリングが片方無くなっている事に気づき、部屋の中を探し回ったんだけどどうしても見つからなかった。
(もしかしてお城で落としたのかな…?だったらもう見つからないかも…)
一応見つかった時の為に宿屋の女将に次の行き先を告げて、翌日私は次の国へと向かった。