藤「これをあの的に当てるんだ。やってみろよ!」
「やってみろって…私弓なんて引いた事ないし」
渡された弓矢を見て固まっていると藤堂が後ろから名前を抱え込んだ。
「Σ!!///」
藤「簡単だって。ここを引っ掛けて…」
抱え込んだまま弓の指導をする藤堂の顔が名前の顔の真横にある。
(なんで何とも無い様な顔してるの!?///)
藤「ほらよそ見すんなよ。ちゃんと的を見ろって」
「Σは、はい!///」
間近で合った目に顔を赤らめながら名前は的を狙い、矢を射った。
店「当たーりー!」
藤「よっしゃー!名前やったじゃん!」
「Σ当たった!やったー!!」
当たるとは思わなかっただけに嬉しさが込み上げ、名前から笑顔が溢れる。
その様子を満足に見た藤堂は辺りを見回す。
藤「そんじゃ次はどれにすっかなぁ?」
「ねぇ、あれは何?」
藤「どれだ?…何かの叩き売りみたいだな」
二人は人集りの中へ入って行くと露店の幟を読んだ。
主藤「【蝦蟇の油】??」
店「さぁさぁ、お立ち合い〜!」
その露店の主人は小刀を取り出すと徐に掌を切ってみせる。
「あの人何やってるの!?」
藤「俺にだって分かんねえよ。何をするつもりなんだ?」
どよめきが広まる様子をこれ見よがしに店主が何かを取り出して掌に塗り込んだ。すると…
主藤「傷が消えた!!」
切り付けたはずの掌は血は付いているものの、傷は跡形もなく消えている。
「凄い!凄いね平助君!」
藤「確かに凄いけど…何か細工してんじゃねえか?」
「え、そうなの?」
?「店主、それは先程の傷に対してどの位の量を塗ればいいのだ」
藤「!!この声ってまさか……」
露店の真正面で店主に話しかける客を見た。
藤「Σやっぱり一君!!」
「え?お知り合い?」
藤「ああ、仲間なんだよ…。名前、ちょっと来い」
(Σ手!!///)
名前は藤堂に手を引かれ、二人は斎藤を露店から引き離した。
斎「平助、一体どういうつもりだ」
藤「一君買う気満々だっただろ!?駄目だって騙されちゃ」
斎「騙される?…………店主の傷は確かに消えていたが」
藤「だから…小刀に細工でもして切った様に見せかけてただけじゃねえの?一君はすぐ信じるから」
斎「そうなのか…!?…ところであんたは?」
名前を横目で見る。
「名前と言います」
斎「名前か…、俺は斎藤一だ。平助、まさかあんたに恋仲がいたとはな」
藤「Σち、ちげえし!///こいつが色々迷子になっててさ。今は縁日を案内してやってんだよ」
斎「色々?」
藤「そ。色々な!」
「うん!」
笑い合う二人に斎藤は首を傾げた。
藤「一君変なのに騙されんなよー?名前、次はどうする?」
「うーん、色々見て回りたいかな」
藤「分かった、じゃあ行くか!」
斎「待て。俺も共に行こう」
藤「え、なんでだ?」
斎「何か不都合でも?名前、構わないか?」
「あ、はい。私は構いませんけど…」
藤「まぁいいか…。とにかく行くぞー!」