私の生き方は決まっている。
毎日生け花やお茶などの稽古をし、お父様のお客様が来られた時は愛想を振り撒いて接待に付き合う。
そしていつか親が決めた相手に嫁ぐ。
悪い事じゃない。それが当たり前だと思ってたし反抗するつもりも無い。
だけど…あの時の私はきっとどうかしてたんだ。
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いつも以上に人で賑わいを見せているこの日の京は縁日。
名前は一人、人混みの中を歩いていた。
(色々あるんだぁ…)
飴細工はもちろんの事、鋳掛屋、金魚売り、神具屋、天麩羅、いなり寿司、様々な屋台が軒を列ねていて大道芸も賑わいに華を添える。
「……だけど道が分からない」
ほんの出来心だった。父親と数人の者を従えて訪れた京で縁日があると聞いた名前。
【縁日に行きたい】。そんな普段は言わない我儘を言った所父親と口論になり、そのまま宿を飛び出してしまった。
「お父様は言う事を聞かない娘なんてどうでもいいんだ…。妹達だっているし私一人いなくなったってどうせ…」
徐々に気が滅入り名前は通りの隅で膝を抱えて屈み込んだ。
(本当に縁日に来たかっただけなのかな…。私はどうしたいんだろ…)
答えの見つからない疑問が頭の中を駆け巡る。
そんな名前を見かけた者がいた。
藤「ん?なんだあいつ…?」
笑顔や笑い声が溢れる中で唯一、今にも泣き出しそうな表情の人物が目に止まる。
藤「お前さ、こんな所で何やってんだ?もしかして迷子か?」
藤堂が近づいて声をかけると、名前はゆっくり顔を上げる。
「誰が迷子よ……いや、違わないかな…」
藤「?やっぱり迷子じゃん、どこに行きたいんだ?俺が案内してやるよ」
屈曲の無い笑顔を向けられ、名前はますます表情を暗くした。
「どこに…行きたいんだろ…」
藤「え…?」
名前が自分でもよく分からない気持ちを藤堂に説明すると、藤堂は今だ座り込む名前に手を差し出した。
藤「お前の言いたい事は分からなくも無いけど、それはお前にしか決められねえだろ?
それがまだ決まんねえ内はとにかく前を見てろって。そしたら何か見えてくるんじゃねえか?」
「前を見る…?」
藤「おう!お前縁日に来たかったんだよな?だったら俺が案内してやるから任せろって!」
「え!でも…」
藤「いいからいいから!ほら行くぞー!」
「うわっ!!」
差し出されていた手に躊躇していると、藤堂が強引に名前の手を掴んで立ち上がらせる。
藤「俺は藤堂平助!お前は?」
「私は名前。」
藤「そんじゃ名前、まずは的当てだ!」