お説教が終りそれぞれ部屋に戻ったのですが、私は意を決して平助くんの部屋へ向かいました。
「平助くん、いいですか?」
「名前?ああいいけど・・リビングで待っててくれ。」
せっかくなのでコーヒーを淹れていると黄色いスエット姿の平助くんがおでこに大きな絆創膏はって現れました。
「コーヒー淹れたのか?」
「うん、さっき左之さんからクッキーを頂いたから・・どう?」
「食べるよ。」
それからお互いに黙ってコーヒーを飲んでクッキーを食べて・・・。
だめ・・はっきり言わなくちゃ・・・。
「あの・・」同時に・・。
「平助くんどうぞ。」
「いや、名前から言えよ。」
また沈黙・・。
「じれったいなあ、そこは平助が男を見せなくちゃね・・一くん。」
「総司、出て行くな。」
「ほんとだぜ。」
左之さんと例の双子が・・・、これじゃあ言えない・・。
「あ、もう遅いね・・おやすみなさい。」
急いで出て行こうとする私を平助くんは抱きしめてくれました。
「待ってくれよ、今日の事は気にすんなよ・・俺、身体を張って好きな女を守れたんだ・・嬉しかった。」
「え、好きな女って・・私・・。」
「初めて会った時から好きだった・・でも今までの俺は兄さんに勝てない事がトラウマになって自分に自信が持てなかったんだ。
だから、おまえの事も片思いでいいと思ったけど、風間に会って・・こんな奴には絶対に渡したくないって思ってさ。結局、勝てたわけじゃないけど、俺・・逃げないで立ち向かえた。
そうさせてくれたのはおまえだから・・。振られても、気持ちだけは伝えたくて。」
「ありがとう・・私も平助くんの事好きだよ。今までずっと一人で寂しかった・・でもここで暮らして兄弟っていいなって思って。
その中でも平助くんとは気兼ねなく話せるし・・何かすごく癒してもらえるの・・だからずっと一緒にいたいって思って。」
「夢みたいだ。」
「私も。」
「おいおい、何かあそこだけ別世界になってねぇか?」
「いいんじゃない?今日だけは頑張ったんだから平助に譲ってやれば。」
「だな。名前ももう少し大人になったら俺の魅力に気が付くしな。」
「残念だが左之兄の出番はない。俺が手取り足取り色々だな・・。」
「何かいやらしいよ、一くん。」
兄弟たちがそんな事を話しているとは露知らず、私達は週末のデートの話をしていました。
(終わりとおまけ)