私、名前。
幼い時に母が亡くなってからずっと、父と二人で暮らしていました。
そんな私も高校生になり、もう父を解放してあげたいと思っていた矢先に・・・父がなんと再婚すると言いだしたのです。
それも相手の方には男兄弟が5人も居る・・・これって私の好きなアニメ・・ブラ○○みたいだ。
戸惑いながらも新しい家族との生活に夢見て・・・来てしまいました橘家の前。
父は結婚と同時に長崎の大学へ赴任したので、母となった百合さんも共に行く事となったのです。
本来なら私も一緒に行く方がいいのだけれど、せめて高校卒業まではこちらで暮らしたいと言う願いもあり・・・それならみんなで暮らしたらという流れになりました。
はたしてブラ○○みたいに歓迎してくれるかしら。
よし・・お腹に力を入れて呼び鈴に手をかけた・・
「うちに何の用?」
振り向くと茶色の髪に翠の瞳の長身の男の子が立っていました。
緑のカーディガンを着ているけど・・・たぶん私と同じ高校生かな。
「ねえ、何見惚れてんの?質問に答えなよ。」
「あ、ごめんなさい・・。私・・今日からこちらでお世話になる名前です・・。」
「名前・・ああそう言えば来るって歳兄が言ってたっけ・・・ふう〜〜ん。」
え・・・何・・この人も兄弟なんだろうけど・・・上から下まで舐めまわすように見るの止めて欲しいよ・・。
「おい、総司、困ってるじゃないか。」
そこへ現われたのが・・・これまたイケメン。
薄紫の髪に藍色の瞳・・背はそれほど高くはないけれどしなやかな動きに思わず目が行ってしまう・・。彼もまた高校生なのだろう・・水色のブレザーが良く似合う。
「あんたは名前だったな。俺はこのうちの三男で一だ・・こいつは四男の総司。俺達は二卵性の双子で高校三年だ。」
二卵性の双子・・・そうなんだ、甲乙つけがたいほど綺麗だけど・・・性格は一さんの方がいいみたい。
「名字、今すごく失礼な事を思ってなかった?」
あ、総司さんって感もいいんだね・・気を付けようっと。
「いいえ、何かドキドキしているだけですよ。」
「まあいいや、とにかく家へ入ろう。」
総司さんに促されて家の中へ入り、リビングで・・・・・。
「あれ、珍しいな・・おまえ達が女連れて来るなんてな。」
・・・・上半身裸・・・・目が回りそう・・。
「左之兄、聞いてよ。この子の事を一くんと取り合てってね・・これから体で・・。」
「総司、いい加減にしろ。名前だ・・歳兄から聞いているだろ。」
「そうか、へえ〜おふくろが言ってた通りなかなか可愛いし・・・身体のメリハリもあるし・・・ふふふ、これは楽しみだな。」
メリハリ・・・あわわわ・・。
「すまない、うちにはこんな奴しかいなくて。あれは二男の左之助・・美容師をしてる。左之兄、いい加減に何か羽織れよ・・・名前が困ってる。」
「男の裸なんて当節の女子高生にとっては何でもねぇだろうが。」
紅い髪に琥珀色の瞳の総司さんより背が高い左之助さん・・・慣れてませんって。
「名前、二階の一番奥があんたの部屋だから、見に行くといい。隣は長男の歳兄だから総司や左之兄もちょっかい出せないから安心しろよ。」
「一くんて時々酷い事を言うよね・・左之兄はともかく、僕が飢えた狼みたいじゃない。」
「違うのか?」
「総司、一に冗談は通じないぜ。とにかく疲れただろう、部屋へ行って休め。」
私はその言葉を待っていたかのようにその場を離れた。
用意された部屋は百合さんが気を使ってくれたのだろう・・女の子好みの家具やベッドがあってすごく癒される。
私はベッドで転がりながら、残りの家族の事を考えていた・・・歳三さんと・・・あれ?誰だっけ?確か同学年の・・・・・。
「え、もう来てるんだ。」
「名字、すごく可愛いよ・・ね、一くん?」
「ああ、たぶんな。」
「へえ〜、一くんがそこまで言うんだからかなりだねって、左之兄・・・そのまま会ったの?」
「なんだ平助、シャワー浴びたんだ、何にも着たくないところをだな・・・パンツを穿いてるだから御の字だろうが。」
諦め顔の平助は冷蔵庫からパックの牛乳を一気飲みして二階へ上がって行きました。
「あれ?平助に部屋替えの事言ったかな・・・ま、いいっか。」
あ、寝ちゃったんだ・・・あんまりこのベッドが気持ちよくて・・・・
バタン・・突然開いた扉から汗まみれの男の子が入って来た・・・。
「・・・なんでだよ。俺の部屋が・・・・こんな乙女チックな部屋に・・でおまえは?」
「あ・・・名前です。」
小柄だけどクリッとした薄緑の瞳の子・・・。
「おまえが・・・ごめん、ここさ三日前まで俺の部屋だったんだよ。だから、いきなり入ってしまって・・。」
「いいえ、気にしてませんから。」
「俺、五男の平助。高2だからおまえと一緒だ。」
「平助くんね、よろしく。」
他の兄弟の方はどちらかというと近寄りがたいイケメンだけど、同学年という事もあって平助くんとはスムーズにお話出来そうだ。
「おまえ、確か島原女子だったよな。」
「うん、そうなんだけどここからは少し遠くなるんで、父は平助くんたちが通っている薄桜学園へ転校したらって言うんだけど。」
「いいじゃん。薄桜には俺や一くん、総司もいるんだから。」
「うん・・・迷惑じゃないかな?」
「そんなことねぇよ。あ、総司か・・。でも口は悪いけどいいやつなんだよ。」
「誰が口が悪いって?」
「総司・・聞いてたのか・・。」
「平助が名字の寝こみを襲うかもって一くんが気にするから、来てみたらやっぱり・・。」
「違います。」
「違げえよ。」
声を揃えて反論して・・・真っ赤になって総司さんに抗議する平助くんが可愛いと思いました。
夜になって帰った来た長男の歳三さんに会って、兄弟すべてに会う事が出来た・・歳三さんは大手の銀行にお勤めのようでいつも帰りが遅いみたい。
その日満場一致で私の薄桜学園への転校が決まり、無事に橘家長女になったのでした。
「おはよう〜、名字。」
「おはようございます、総司さん。」
「いいなあ・・やっぱり朝は男の野太い声より可愛い女の子の声が良いよ。」
あ・・可愛いって・・・嬉しいけど何で抱きつかれてんの・・。
ほらって一さんが救ってくれましたけど。
「一くん酷いよ。僕は名字がいち早く僕らに慣れて欲しくてさ・・スキンシップって大事だよ。」
「ん?そうなのか?だったら俺も。」
は・・一さんが・・ほっぺにちゅって・・・倒れそう。
「二人とも何やってんだよ!もう油断も隙もない・・名前来いよ。」
平助くんに手を引っ張られて無事に二人から逃れたのでした。
「名前、どうした赤い顔して?」
キッチンの前で会った左之助さんは・・・なんで朝から上半身裸なの・・・・。
「左之兄!女の子が居るんだから何か着てくれよ。」
平助くんの叫び声もなんのその・・・笑いながら牛乳1リットルパックを豪快に飲んでいる左之さん・・・。
父との静かな生活とはかけ離れたものであるけれど・・・とっても楽しい・・家族っていいものだね。
毎日驚くような事の連続だけれど、無事に編入試験も通り平助くんたちと同じ学校へ通えることになりました。