やがて京の町に不逞浪士達がはびこるようになり、斎藤さんを始めとした隊士の方々は日夜巡察が忙しくなってきていた。



ある日のこと、島原の月の屋さんにお菓子を納めに行き勝手口で禿ちゃん達と話し込んでいると・・突然銃声が聞こえてきた。


咄嗟に禿ちゃん達を外にだし、姐さんや女将さんの様子を見に奥へ進んで行った。


表玄関口には新選組の方々が刀を構えて三人の不逞浪士を取り囲んでいる。


浪士達の中の一人が拳銃を持っている関係でうかつには飛びこめないのだろう・・。


私は怖さを忘れて浪士と対峙している斎藤さんを見つめていた。



カサ・・



それはとても小さな音だったから新選組の方々には聞こえていないだろうが、確かに皆さんには死角になっている辺りに潜んでいる者がいるのだ。


私は息を殺して音のあたりを見続けた・・すると・・え・・銃口が・・


しかも方向が明らかに斎藤さんに向いている・・そう思った瞬間、


「斎藤さん、銃が狙っています。」


自分でも信じられないくらい大きな声で・・しかも身を乗り出して・・。


驚いた斎藤さんが私の方に身体の向きを変えた瞬間、弾が飛んで来た。


その軌道をたどるとやはり斎藤さんの立っていた場所辺りなのだ。


銃声と共に両者入り乱れ、斬り合いになる。


私はかろうじて帳場の影に身を隠し騒動が収まるのを待っていた。


やがてその場が静かになった・・だが、不覚にも腰が立たない。


「名前、何処だ。」


それは私の大好きな方のお声


「ここです、斎藤さん・・帳場です。」


顔を上げるのがやっとだった私をそっと抱き上げてくれた斎藤さん。


優しい言葉を期待していた私に


「名前、何故あのような危険な行動をした。」


それは怖い顔で叱るあなた。


「だって・・あなたに何かあったらどうしようとばかり考えていて・・夢中でした。」


「だからと言って、斬り殺されたかもしれぬのに。まったく・・。」


「はい、夫婦げんかはうちに帰ってからだよ。」


笑いながら斎藤さんの肩を叩いた沖田さん。


斎藤さんはまだぶつぶつ言いながらも立てない私を横抱きにしてそのまま屯所へ向かった。


後で分かったのだが、私が飛びだした時・・実は浪士によって背中を斬られていたのでした。


でも本当に夢中で斬られたことなどまったく分からず・・屯所に帰ってから痛みと怖さのせいで高熱を出し寝込んでしまいました。


病の身体では家に帰れないと言う事で私は斎藤さんのお部屋で看病して頂くことになった。


寝込んでみて初めて斎藤さんの素の部分を知ることになりました。


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