小さいあなたの背中を。
少し下がって後ろから見ていた。
―あと数センチの距離―
「いい天気だねー。烝君。」
山「そうですね。名字先輩。」
昨日まで降っていた雨が嘘のように雲ひとつない空だった。
ぴょんぴょんと小さく水たまりを飛び越えながら歩くのは一つ上の先輩、名字さん。
俺はそれを後ろからついていく。
「雲がないよ。日焼けしちゃうな。」
山「日焼け止め塗らなかったんですか?」
「とれちゃうよ!汗かいたらすぐだよ、すぐ!!」
子供みたいに笑いながら先輩が振り向いた。
俺と先輩は同じ保健委員で。
仕事を一緒にするうちによく話すようになった。
先輩は人懐こいからか、第一印象が悪い(とよく言われる)俺にも平気で話しかけてきた。
そして委員会のある日は家が意外と近いということで一緒に帰るようになった。
付き合っているのかと言われたら
違う。
いつも俺は先輩の斜め後ろを歩いて、先輩の小さな背中を見て。
その行動に少し心があったかくなっているだけだ。
いい雰囲気なのかと言われたら。
それも違う。
天気の話をしたり、授業の話をしたり。
たわいもない話をしながら帰るだけで。
でも沈黙が苦しくない。
つまり。
好きなのかと言われたら。
きっとそうだ。