1 



SでもMでもない。
普通の人がいいんですけど。
これってそんなに叶わないものですか!?






―SでもMでも―







 「こーなーいーで!!!」






沖「素直じゃないなぁ。どうして逃げるの?」







放課後。
もう日課のように沖田君と追いかけっこをしている。




一人で帰れると言い張る私に普通の女の子なら恋しちゃうような眩しい笑顔で家まで送ると言う彼は一体なんなんだろう。






沖田君はかっこいい。
要領がいいから勉強もできるし、剣道部では彼に敵う人はいないらしい。
顔も良くて運動もできて頭もいい。


私はどうやらそんなマンガみたいな人に好かれているらしい。
それこそマンガみたいだ。




だけど私は沖田君のことよく知らない。
ゆっくり話したこともない人にいきなり付き合ってと言われても無理があるでしょ。




だったらゆっくり話せばいいじゃないと言うその距離が近くて。
あれよあれよと手を繋がれ、抱きしめられた。



それは、彼と初めて話した日のことでした。





その日から1ヶ月。
毎日こうして追いかけっこ。





沖「つっかまえた♪」




 「ぎゃああ!!!」




つかまった・・・・。




 「ひ・・人がいないからって廊下で抱きつかないでください!!!!」




沖「だってこうしないと逃げちゃうんだもん。」




 「ちちちちちちち近い!近い!」





沖「ん?顔が赤いよ。」





 「近いんだよ!このド変態!!!!」




――バシッ!




私の裏拳は沖田君の顔にミラクルヒット☆






沖「ふふ、この痛みも愛だと思えば嬉しいよね。名前ちゃんは可愛いなぁ。」





 「なんでだぁ!?」




爽やかに笑ってるけど殴られたところ赤いからね!?
この人Mだよね!?
ドがつくMってやつだよね!?






その後も殴る蹴ると女子なりの最大限の抵抗をみせるも通用しない。
当たらないとかじゃなくて当たってるけどこの人何も変わらない。





 「私はドMは嫌いです!!!!」




沖「嫌よ嫌よもってやつだよね?」




 「どう変換したらそうなるんですか!?頭の中どうなってるんですか!?」




この人が学年一モテるとか信じたくない。





沖「頭の中は名前ちゃんでいっぱいだよ。」




 「ぎゃああああ!!!!」




私の叫び声に気付いた土方先生が来るまで。
沖田君は私を放してくれませんでした。

    

 ←short story
×