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春眠暁を覚えずとはよく言ったものだ。
窓からポカポカと日が照って、
あっという間に眠くなる。

あれ、でも春眠暁を覚えずって
春は眠くて起きられないって意味だっけ?
それとも日の出が早くなるからいつもの時間に起きてももう日が昇ってしまっている的な意味?

あぁ、そんなこと考えていたらまた眠くなる。

春は生き物が目覚める季節なはずだ。
冬眠からさめる生き物がたくさんいるもの。

人間も冬眠すれば春はすっきり起きていると思う!


・・・って違う違う。
そんなこと考えているから眠くなるんだって。

睡眠から離れろ、私の頭。

離れたくないとか言うな、私のまぶた。


何か気を紛らわせなくちゃ。

正面を見る。
黒板に綺麗な字を書いているのは土方先生。
古典は好きなんです。
ただ、午後の授業が眠いだけで・・。

しまった!また眠くなった。


右を見る。
山崎君がスラスラとノートを書いていた。
ぼーっと見つめる。

一見怖そうというか、目がきりっとしてるからね。
とっつきにくい印象があるんだけど。
ひそかにファンクラブがあるくらい実はもてるんだよね。
沖田君とか、斎藤君に比べたら少ないかもしれないけど。
ただ、あまり女の子と話しているところ見たことないな。

私は隣の席ということもあって、少し話せるようになったんだけどね。
話してみるとけっこう話してくれる。
というか、私の話を聞いてくれているというほうが正しいんだろうな。

でも少しずつ仲良くなれている気がしている。

山崎君が視線に気づいたのかこちらを向いた。

眠くて頭がぼーっとしているのもあって
なぜか目をそらすことを忘れた。



山崎君、目、綺麗だね。



ふと思った。

ただそれだけなのに。


山崎君の顔が赤くなった。

あ、私見つめすぎた?

ゆっくりと正面を向く。

相変わらず土方先生が黒板をさしながら何かを言っていた。


先生、それ、ラリホー唱えているんですか?
完全にきいてます。
むしろなんでみんなきかないのよ。
全員でマホカンタしてんのか。
跳ね返して土方先生眠らせてくれ。

あ、目の前の平助はラリホーにかかったみたい。

私も・・もう・・無理。

    

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