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よめない・・

あなたの心がまったくよめない。

どうしてですか!

斎藤組長!















私は確か斎藤組長と恋仲になったはずだった。


町で斎藤組長をお見かけし
完全に一目ぼれ。
新撰組の女中になんとか転がりこみ
仕事をしながら組長に接近!
沖田さんに邪魔されてもめげず、
口数の少ない斎藤組長との会話を重ね半年。

 「あの・・私!斎藤組長を・・お慕いしてます。」

いつも勢いよく話す(一方的に)私が語尾を小さくしながらも伝えると
斎藤組長は少し目を丸くして(そんな表情も素敵)
でも小さく微笑んで
斎「そうか・・。」
 「わ・・わた・・わた私と・・その・・。」
斎「あぁ。」
 「こここここ恋仲に・・。」
斎「あぁ。」

顔をあげると
いつもより優しい顔をした組長がいた。

 「もう・・死んでもいいです。」
斎「それは困るのだが・・。」


とかなんとか。
最後のほうはもう嬉しすぎて記憶にない。


そんなときから10日ほどたった。


が!



「口づけどころか、手もつないでいない・・。」

仕事を終え、1人縁側で休憩をしていた。
だいたいの人は巡察やら稽古やらで誰もいない。

「私、からかわれてるのかしら。いや、組長はそのようなお人では・・。でも、女として見られていない?それとも私は何かしてしまったのかな。」

沖「君が女として見えないなんて今に始まったことじゃないでしょ。」

 「ぎゃーーーー!」

沖「ちょっと、大きい声ださないでくれる?」

 「いいいいいいきなりなんですか!」

沖「名前ちゃんがブツブツ呟いているからでしょ。怖いから。」

いきなり後ろに沖田さんがいた。
そういえば今日非番だったっけ?

沖「一君のことで悩んでるの?」

 「う・・。」

相談するべきか・・。
でもこの人、楽しむだけな気もする。

沖「恋仲になったんだって?ついに。」

 「なな・・なんでそれを!」

沖「名前ちゃんが勢いよく気持ちを伝えているところを見ていた隊士が何人かいるけれど。周りを気にして伝えたほうがいいんじゃない?」

 「死にたい。」

沖「介錯してあげようか?」

 「お断りします。」

嬉しそうです、沖田さん。
半分本気ですよね。

沖「で、何をそんなに悩むの?」

 「だって・・。恋仲らしいことなにも。」

沖「明日一君非番でしょ?町にでも二人でいってきたら?」

 「え?」

沖「そういうことしたら少しは変わるんじゃない?」

励ましてくれるのですか・・?
信じられないです。
明日雨ですね。

沖「全部口からでてるけど。ほんとに切るよ。」

 「す・・すみません!!」

急いで沖田さんから逃げ出した。
その足で組長の部屋へ向かう。
もう稽古の時間は終わったはずだ。


 「斎藤組長!」

斎「名前か?入れ。」

ふすまを開け部屋に入る。
組長の部屋は本当綺麗に片付いているなー。

 「あの・・明日もしよかったら・・。」

斎「町にでも出るか?」

 「え?」

斎「ちょうど名前に言いに行こうと思っていたところだ。」

 「嬉しいです・・。」

斎「行きたいところはあるか?」

 「組長とならどこでも!」

斎「・・そ・・そうか。甘味処でもいくか。」

 「はい!」

あれ、組長苦笑い?
でもやっと・・やっと恋仲らしくなれそうです!

    

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