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賑やかな会場。

飲み物を片手にうろうろしていた俺は。

思わず立ち止まる。

その見慣れた後ろ姿に体が動かなくなった。

だって。

髪型や服装が変わったって。

すぐにわかってしまうから。









―ただひとつの後悔―









俺の人生、そう悪くはないと思う。
友達にも恵まれて、頭が良くないながらもなんとか大学に行って、不景気のこの時代に就職もできた。
まあ、しいて言えば…もう少し背が高かったらって思うぐらいで。


でも一つだけ。一つだけ心残りがある。


いろんな日常の変化に蓋をされて忘れていたのに、あっという間に俺の頭を占拠した後悔。










沖「ねえ、平助君。同窓会どうするの?」


そんな電話が総司からきたのは一ヶ月ぐらい前。
社会人になってから半年が過ぎようとしていた。


平「あーそういえば連絡きてたな…一君から。」


沖「僕と平助君だけらしいよ、返事がまだなの。」


平「げっ!まじで??」


沖「うん。一君が静かに怒ってたから返信してあげてよ。あ、僕は参加予定だから。」


平「わっわかった!!」


電話を切るとすぐに一君にメールをした。
もちろん参加と打ち込んで。


平「あっぶね…一君怒ると怖いからな。」


高校の同窓会か。
総司や一君は今でも付き合いがあるけど卒業以来会ってない奴がほとんどだ。


平「なんか楽しくなってきた!…あ。」


思い立ったら即行動!
携帯をベッドの上に放り投げ俺は押し入れから段ボールを引っ張りだす。


平「確かここに…あった!!!」


卒業以来、一度も開くことのなかったアルバム。
すこしざらついた表紙に触れ、ぱらりと硬いページをめくる。


平「うわ…懐かしいな。」


そこには五年前の自分たちが笑顔で写っていた。まだ少し幼くて自分で見ていてくすぐったい気持ちになる。


平「あ…。」


目が止まる。
その一か所から逸らすことができなくなった。



名前。


名字名前。



平「名前…。」



ふわりと微笑んで写っていた彼女は自分の記憶のままで。

瞬間。

一気に思い出が鮮やかによみがえって。

俺は一瞬でその中に入り込んで行ったんだ。

    

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