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先生…。
胸が苦しいんです。
ドキドキして。
ズキズキして。



どうしようもないんです!!!








―恋の病ですから―









 「と、いうことで土方先生!どうにかしてください!さあさあ!!!」



診察室に入るなり先生の横にある椅子に座りぐいぐいと近づいてみる。
でも先生はこちらを振り向こうともせず、おそらく前の患者さんのであろうカルテに目を通しながら看護師さんに指示を出し続けていた。


 「せーんーせーいー!」



土「とりあえず診察室から出ろ。今すぐ病室戻りやがれ!!!!!」




 「きゃ☆怒られたー!!!」



看護師さんに笑われるのも、他の患者さんに笑われるのももう慣れた。
最早土方先生に怒鳴られるのなんて日常茶飯事だし、怒鳴られるのわかってて先生の診察室に侵入するのは私の日課だ。



土「点滴してる時ぐらい大人しくできねえのか!てめえは!!!」



 「先生!眉間眉間!皺がすごいよ!それからこめかみぴくぴくしてるから!血管切れる!」



土「誰のせいだ!!!」



 「ああ、怒鳴られたから頭痛いなー。お腹痛いなー。胸が痛いなー。」


言いながら頭やお腹や胸元を抑える。
すると土方先生が少しだけ眉を動かした。


土「ああ??どこだ?」



 「恋の病!触診希望!!!!!」



土「悪いのは頭の中だけだ、安心しろ。」


 「ちょっと!頭の中だけだったら私こんなところにいませんから!」



土「大人しくしとけば退院できるって言ってんだろ!!!早く病室戻れ!」



 「ぎゃああ!」



点滴を掴み診察室を飛び出した。
走るんじゃねえ!という怒鳴り声が後ろから追いかけてきたけどそのまま走って自分の病室へ戻る。



 「はー怖かった。」


部屋に戻るとベッドに入り大人しく横になる。
といっても昼だし眠くないわけで。
友達が持ってきてくれたマンガに手を伸ばした。


小さい頃から体があまり強くなくて、時々こうして入院をしていた。
土方先生と知り合ったのは去年。


駄目だとはわかっていても入院生活を続けているとなんだかやるせなくなってイライラすることがある。
悪いとはわかっていても周りにあたってしまうこともあった。

そんな中。
土方先生は。




土「甘えてんじゃねえ!!!辛いのはてめえだけじゃねえんだ!周りもなんだよ!!!」




私を思い切り怒鳴りつけました。




めちゃくちゃ驚いた。
その時は親も友達も看護師さんもお医者さんも、みんな腫れものに触るように私に接していたのに。
土方先生だけはちゃんと叱ってくれたんだ。



その日から私は。
完全に恋の病になったのです。

    

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