3 




平「んっ…。朝?」




瞼の裏に光を感じて目を覚ます。
頭がぼんやりしている。

なんだ…?

俺、なんか大事な夢を見ていた気がするんだけど。





 「ん…。」




腕の中の名前がもぞもぞ動く。
まだ眠っているのか目は閉じたまま。




平「名前、泣いてる?」




目元がきらりと光っていた。
怖い夢でも見ているのか?
優しく拭うとぱちっと目があいた。




平「おはよ。名前。」




 「んー平助くん…。」




すりすりと俺の胸に顔を埋める名前が可愛くて俺はぎゅっと抱きしめた。
まだ意識がはっきりしないんだろう。
名前は俺にしがみついてくるものの何も言わない。




平「お前、何泣いてんの。今日は大事な日だろ?」



 「な…く?」



ゆっくりと手を目元にもっていく名前。
多分泣いてることに気がついてないんだろうな。
だけどその手がそのまま俺の目元へ移動した。




 「平助君も…泣いてるよ?」



平「え?」



思わず手で目をこすると確かに泣いていたような跡がある。
あれ?何で俺泣いてたんだ??



 「悲しい夢でも見た?」



平「いや、覚えてないけど、お前は?」



 「うーん。悲しいって記憶はないけど…。でも、なんか。」



平「?」



 「幸せだった気がするんだけどな。」



平「…多分、俺も。」




名前の左手を掴んで二人の顔の間に持ってくる。
お互いの薬指におそらく一生はめることになる指輪が光っていた。




平「こんな日に泣いてる場合じゃないよな、俺達。」



 「うん。目はれちゃうよ。」



平「俺はともかく、お前はだめだろー!綺麗な花嫁になるんだからさ。」



 「えへへ。なれるかな?」



平「なれるよ、俺の嫁さんなんだから。」



もう一度、腕の中にしっかりと名前を閉じ込める。



夢の内容はあまり覚えてない。
だけど俺は幸せで、だけどどこか悲しい夢だった気がするから。


もうそんな夢、見ないように。
もうそんな夢、見させないように。





平「名前、ずっと一緒だ。幸せにするから。」




 「うん、ずっと一緒にいようね。」




平「じいちゃんばあちゃんになってもだぞ?」




 「おばあちゃんになっても可愛いって言ってね?」




くすくす笑う名前にキスをした。
少し頬を赤らめて俺を見るのがたまらない。





平「愛してるよ、名前。」



 「私も、愛してる。」





死が二人を分かつまで。
いや、死さえ二人を分かつことができないぐらい。




ずっと一緒にいることを。




誓います。















  end 

 ←short story
×