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次の日も焼けるような暑さで、太陽がジリジリと肌を焦がしていく。


まだ家を出て五分もたっていないというのに汗がたれてくる。
雲のひとつでも出ていれば隠れられるというのに。



昨日は先輩と寄り道をして帰った。
二つに分けられるアイスを買ってくると先輩は嬉しそうにそれを割って俺に半分渡してくれた。

いつもは先輩の二歩分後ろを歩いていたけれど、昨日は一歩近づいた。


それでも横に立てなかった俺は情けない奴なんだろうな。


近づきたいと思うのに。
変わってしまうのがどうしようもなく怖い。
あの笑顔が見られなくなったらと思うと。
足が前に進まない。





ふと足元をみると道の片隅に咲いていた花が目に付いた。
名前もわからないし、どこにでも咲いていそうな花だ。




山「・・雨が降ったのによくもったな。」




数日前の雨はかなりの強さで、あちこちで土砂崩れや川の氾濫が起きたというニュースが流れていたというのに。



風にふかれてふわふわと揺れているその様子に先輩の顔が浮かんだ。



 『烝君!』



声が聞こえた気がした。




強い雨にも負けなかった小さな花から。



いつまで背中を見てるつもりだと言われているようで。




何も言わなければ、ずっと。



変わらない二人でいられるけれど。



そんな未来が俺は欲しいんだろうか?



いつも咲いている花に気がつかなかった俺に。



気付かせてくれたのは先輩なのに。



俺は。



見ているだけでいいのか。




花にそっと触れてみた。



ふわりふわりと手から逃げそうで、でもおさまっていて。

















隣にいたい。




その手に触れたい。




こんな風に思う俺は。




嫌われてしまうだろうか?

   

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