「もうすぐ夏も終わるね。」
山「まだまだ暑いですけど・・。」
歩いているだけで汗が落ちてくる。
軽く拭いながら返すとまた先輩が笑いながら振り向いた。
「でも夕方とか涼しくなってきたよ。」
山「確かにそうですね。」
もうすぐ季節が変わるんだろう。
日が暮れるのが早くなっていることに俺もそれは感じていた。
「いろいろなところに目をむけるとね、新しい発見があるんだよね。」
山「発見・・。」
普段子供っぽいのに。
こういうときだけ大人びた表情をする。
「昼間は思い切り太陽にがんばってもらわないとね。夏を忘れないように。」
山「夏を忘れないように・・ですか。」
正直暑いのは苦手だ。
だけど。
こうして一緒に帰れるようになったのはよく考えてみれば夏の始まりぐらいからだ。
ならば。
山「そうですね・・忘れないように。」
刻み込んでおきたい。
どの瞬間も。
俺が先輩といられるこの時間を。
忘れることがないように。
「じゃあね、烝君。また明日。」
山「あ・・はい。また明日。」
先輩と一緒にいられる最後の曲がり角。
お互いに背中を向けて歩き出す。
今日もまた。
先輩の隣は歩けなかった。