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一番怖いのはドMということを知った。





叩いても蹴っても。
嫌いだと言っても。

どんなに拒絶しても這い上がってくるから。


這い上がる?ううん、違うな。


多分気にしてない。
むしろ私が騒げば騒ぐほど嬉しいんだ。
だとすれば。










 「そっか・・じゃあもしかしたら、いつもと違う態度をとってみれば・・・。」





違う態度って・・どうすればいいんだろ。





お昼の時間になり、購買へパンを買いに行く。
たくさんの生徒のパン争奪戦に何とか勝ち、クリームパンとサンドイッチをゲットした。





天気も良いし、屋上に行こうかな。






屋上には数人の生徒がいた。
みなそれぞれ友達と話しながらご飯を食べている。



私は隅に座ると買ってきたパンにかぶりついた。





ここ最近暇さえあれば沖田対策について考えている。クラスメイトの大半ももはや日常の風景にぐらいしかとらえていない私達のやりとり。



助けてくれる人がいないなら自分でなんとかするしかないんだ。






沖「おいしそうだね、クリームパン。」




私の左手にあったクリームパンが襲撃を受けた。
ぱくりと一口持っていかれる。


ってか・・食べかけ・・。





 「わぁぁあああ!」




沖「名前ちゃんと間接キスしちゃった。」





てへって効果音が聞こえてきそうな笑顔。
遠くから見ていたら可愛いと思えたんでしょうけどね。近くて無理です。





沖田対策・・沖田対策・・
あ、そうだ。いつもと違う風に・・。





沖「横で食べていい?」



いつもなら全力の拒否。だから・・




 「いいよ。」




沖「え?」




 「一緒に食べよ?」




ひきつってるかもしれないけど笑顔でそう言った。
沖田君は目を丸くしてこっちを見てくる。





よし・・。いいかも。
いつもと違う反応だから戸惑ってるはずだ。




沖「名前ちゃん・・?」




 「ん?」





男の子って追いかけてる時は楽しいけど、いざ捕まえちゃうと飽きるって言うよね。
それかな?それになってくれ!






沖「・・・やっぱり今までのは照れ隠しだったんだね♪」




 「え?」



沖「可愛いなぁ、もう。」




――ギュッ





 「いやぁああああ!」




逆効果でした。








屋上にいるみんなの視線を一人占めして。
私の昼休みは幕を閉じた。

   

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