「誰だろう・・?」
私は玄関の覗き穴から外を見た。
そして・・驚く。
だってそこには。
急いで鍵を開けてドアを開けた。
「斎藤君!?」
雨に濡れて、びしょびしょになっている斎藤君が立っていた。
「どうしたの!?」
斎「電話を・・。」
「え?」
斎「かけ直したんだが・・。」
あ。
充電切れてた。
「もしかして・・心配してきてくれたの?」
斎「何かあったら・・まずいと思って。」
顔を赤らめながら視線を逸らし小さく呟いた。女性の二人暮らしでは物騒だとかなんとか最後はよく聞こえない。
「あの、とりあえず入って?」
私は急いでタオルを取りに行き斎藤君に渡した。
斎藤君は髪を乾かし、肩や腕もふいている。
「私のジャージ入るかなぁ・・?」
斎「いや、大丈夫だ、気にするな・・。」
「気にするよ!!」
斎藤君の制止は無視してジャージを探しに行く。
Tシャツは大きめのを貸せば大丈夫だよね。問題は下だけど・・私の身長じゃ斎藤君の足がだいぶ出てしまう。
・・・それもおもしろいけどとか考えてしまう自分が嫌だ。
とりあえず着替えを渡してシャワーをかすことにした。
だって私のせいで風邪ひかれたら困るもん!
十分もしないうちに斎藤君がでてきた。
あぁ・・やっぱり足の長さが・・。
むしろハーフパンツかせばよかったかなぁ。
とか悩んでいる場合じゃない。
「あの・・さっきはごめんなさい。私、課題でわからないことがあって・・斎藤君に聞きたくて。でもメールすれば良かったよね?みんなに何か言われた?」
斎「いや、それは気にしなくていい。大したことではない。」
「でも・・。」
斎「課題とは数学か?」
「え?あ・・うん。」
斎「俺で良ければいつでも教える・・。」
そう言って斎藤君は何かに気付いた。
「斎藤君?」
斎「・・・・鞄を・・。」
「鞄?」
斎「忘れた。」
「えぇ!?あの・・それは、皆さんのところに?」
斎「・・・。」
斎藤君は顔を真っ赤にしてポケットから畳んでおいた制服のポケットから携帯を取り出した。
メールがきていたらしくカチカチとボタンを押して読んでいる。
斎「・・・鞄は明日学校に持っていくと・・平助が。」
「あ・・良かったね・・?」
他にもカチカチとボタンを押してメールを読んでいる。何通かきていたみたいだけど読み続けるごとに斎藤君の顔がさらに赤くなっている気がした。
そりゃ鞄を置いていきなり飛び出して行ったら。
皆さんに何てメールをうたれるか・・私でも想像つくもん。
「あの・・ごめんね?ありがとう。わざわざ来てくれて。」
斎「いや、礼を言われるようなことはしていない。」
「ううん、嬉しかったの。こんな風に心配してくれる人がいるなんて。」
だって、最近話すようになったばかりだったのに。
こんな風に心配してくれたら。
「好きになっちゃうよ・・。」
斎「え?」
「え?」
あ。
あれ?
私今、声に・・でた!?
「あ!あ!あの!!今のはそのー。」
斎「名字。」
ふわりとシャンプーの香りがした。
斎藤君の顔が近くて。
ぎゅっと抱きしめてくれる腕が頼もしくて。
斎「好きだ・・。」
「え?」
斎「これからはいつでも俺を頼ってほしい。お前の力になりたい・・。」
なんで?なんで?
斎藤君が私を??
「あの・・いつから・・?」
斎「ずっと前から。お前と話すようになるよりも前からだ。」
嘘・・。
そんなこと・・あるのかな?
斎「些細なことでも、お前の力になりたい。付き合って・・もらえるか?」
「うん・・。」
――グ〜〜〜
静まれよ、私のお腹。
このタイミング!?
――グ〜〜
あれ?今のは。
「「・・・。」」
そりゃお腹すくよね、斎藤君も。
多分ご飯食べる前にこっちに来てくれたんだよね。
「ご飯・・食べてって?」
斎「良いのか?」
「もちろん!」
斎藤君の為にご飯の準備を始める。
こんな風になるなんて、思ってもいなかった。
とりあえず今から帰ってくる妹に何て説明しよう?
そんなことを考えながら、窓の外の雨音に耳を傾けた。
その日から。
私は。
雨が好きになった。
だって雨は。
斎藤君と私を繋いでくれたから。
終