手をつないでいるぐらいで赤くなってちゃだめだ。
これじゃいつまでも子供扱い。
なんとか頬から熱がなくなったころ。
もうひとつの問題が。
(・・痛い。)
足が痛い。
慣れてない靴をはいてるからか靴ずれができてる。間違いない。
どうしよう。
でもここで靴ずれなんて言ったら。
慣れない格好するからだって、また子供扱いされちゃう。
土「・・。名前!」
「はい!?」
土「聞いてないだろ。・・お前、調子悪いのか?」
「え?いえいえ、どこも。」
土「少し苦しそうな顔してたぞ。」
「そんなことないよ。」
土「・・・・・。本当のこと言え。」
土方先生に目を細められながら言われたら。
白状しちゃうでしょ、誰でも。
怖いよ!ほんと怖いからやめてー!
「く・・くく靴ずれが・・。」
土「あぁ?靴ずれ?・・うわっ痛そうだな。」
そう言うと歳三さんはためらうこともなくひょいと私を抱き上げた。
「え?!えええ!?」
土「静かにしろ。車に戻る。」
お姫様だっこだよ!?
ちょ・・ダイエットしておけばよかった。
土「ったく・・ガキが無理して大人っぽい格好なんてするからだ。」
あ・・大人っぽいって思ってくれてたんだ。
「だって・・歳三さんに少しでも追いつきたいじゃないですか。歳三さんの周りには大人の女の人がいっぱいいるから。」
なんだか悲しくなってきた。
どんなに無理したって私は子供で。
一人じゃ何もできないし、デートの時にヒールで横も歩けない。
土「お前はそのままでいいんだよ。あまり急に大人になるな。・・焦るから。」
「?」
土「ガキじゃねぇって思ったら、止まんねぇだろうが。」
「!?」
車につくと歳三さんは助手席に私を下ろしてくれた。
私がバッグから絆創膏を取り出すと絆創膏をとり、貼ってくれる。
土「よし。じゃあとりあえずまた車だすか。歩かなくてすむだろ。」
「ごめんなさい・・。」
そう言って運転席に座り、車を発進させる。
訪れる沈黙。
何を話そうか迷っていると、口を開いたのは歳三さんだった。
土「しりとりするか。」
「え!?・・そんな子供みたいなこと、し・・しません!」
さっき自分から切り出しておいて何を言うかって感じだろうけど。
これ以上子供扱いされるのは耐えられない。
土「いいから、ほら。『り』だよ、『り』。」
「りんご・・。」
土「ごま。」
「マウス。」
土「好きだ。」
「うぇ!?」
驚いて歳三さんの方を見ると前をむいたまま、まるで何事もなかったかのような表情で。
土「ほら、『だ』で始まる言葉だよ。」
「だ・・大好き?」
土「キスしていいか?」
「か・・からかってるんですか?!」
土「からかってねぇよ。」
信号待ちで車が止まると歳三さんはこちらへ身を乗り出し、小さくキスをした。
ニヤリと笑うのが憎たらしい。
だって私は真っ赤になっているはずだから。
「よ・・余裕たっぷりでずるい・・。いつも慌てるのは私だけ・・。」
下を向いて呟いた。
あ、しりとり何気に続いてる。
歳三さんが真っすぐに私を見つめる。
言おうかためらっているようにも感じたが決心したらしい。
土「結婚しよう。」
「え・・?」
土「ほら、『う』だ。『う』。」
「うん・・。」
土「しりとりは俺の勝ちだな。」
「うぅ・・ずるいです・・歳三さん。」
土「おい!?泣くな!なんで泣くんだ!?」
泣くに決まってるじゃないですか。
なんでいきなりそんなこと言うんですか。
あなたに釣り合っているか不安だったのに。
どうして一瞬で不安を消せるんですか。
土「頼むから泣くな・・。俺はお前の笑ってる顔が好きなんだよ。卒業したら、さっさと籍いれるぞ。」
「ふぁい・・。」
無理やり笑ったけど、涙でぐちゃぐちゃだ。
でもこんな私を好きだと言ってくれるんだから。
もう少し子供のままでもいい気がした。
いつか貴方に追いつくから。
それまで待っててね、歳三さん。
終