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まさか教え子に惚れるなんてな。


ちょっと前まで思ってもいなかった。









 『先生!好きです!』




名前にそう言われたのはあいつが二年の時だからもう半年近く前だ。
最初はガキが年上に憧れる一時の気の迷いとして流していたのに。
あいつは毎日のように国語準備室に通い、俺に勉強を聞いたり、雑談して帰るようになった。


ただ、好きですと時々伝えられるだけで、他には普通の生徒と変わらないことしか言わない。
避けるのも違うと思った。
しかもあいつの笑顔は何故か嫌いになれなかった。


あいつが三年になっても俺の気持ちに変化はなかったのに。




土『・・ん?』



廊下の窓から中庭が見えた。
そこには名前と総司の姿があった。
学生同士、話すこともそりゃあるだろうが。
仲良さそうに話しているのを見て無性に腹が立った。ただ、その時はまだ俺は自分の気持ちに気がつかなかった。


別の日に名前と平助が話しているのを見た。平助が顔を赤らめながら一生懸命何か話していて、あいつは笑って聞いていた。
その笑顔にも腹が立った。



そして気付いた。



俺は、あいつのことを・・・。



















 「・・せえ!先生!!!」



土「っ!?」




気が付いたら目の前に名前がいた。
どうやら何度も呼んでくれていたらしい。




 「私そろそろ帰りますけど・・大丈夫?」



土「あ・・あぁ。気をつけて帰れよ。」




 「はい。模試終わったらちゃんとデートしてくださいね。」



そう言って笑うと名前は部屋を出て行った。

あの笑顔を独占したい。




土「・・・ガキは俺だな・・。情けねぇ。」




気がついちまったら最後。


他の男と話しているだけでイライラするし、教師という立場にいなきゃいけない自分が歯がゆかった。

早く卒業の日がきてほしいのは。



土「多分、あいつより俺だな。」



すっかり冷めきったコーヒーを一気に飲み干した。

   

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