あぁ。
どうしたら大人っぽくなれるのかな。
どうしたら彼に釣り合う女の子になれるのかな。
背伸びしても届かない。
早く貴方に追いつきたい。
―子供な私、大人な貴方―
「ひーじかた先生!」
土「どうした。」
国語準備室の扉を勢いよく開けられることにも慣れたのか、私が入ってきても仕事をやめる気配はない。
「あれ?怒らないんですね。ドアを開ける前にノックしろ!そして静かに開けやがれ!って。」
土「わかってるなら実行しろ!!!」
「あ、怒られた。」
やっと振り向いてくれた彼の眉間には見事な皺。学校だと煙草も吸えないからイライラするんだろうなぁ。
「コーヒー飲みますか?」
土「お前・・生徒がここでコーヒー飲んでるんじゃねぇよ。」
「ま、いいじゃないですか。」
私はカップを二つ用意し、コーヒーを作り始めた。ここにあるものはだいたい把握している。
というのも、私が毎日のように通っているからだ。
・・こっそりね。
土方先生と付き合うようになったのは数ヶ月前。まだ私が二年生で一方的な片想いだったんだけど。
土『何度言われてもだめだ。俺は教師だぞ。お前みたいなガキと付き合えるか。』
この台詞は耳にタコができるぐらい聞いた。
多分何百回とね。
それでも私はあきらめなかった。
だって先生が好きだったんだもん。
もちろん先生と生徒って立場が難しいのもわかるけど・・あきらめられるほど大人じゃないから。
何度も何度もここに足を運んで。
勉強も見てもらって。雑談して。
それでやっと
土『はぁ・・お前みたいな女は初めてだよ。』
『先生!じゃあ・・。」
土『ちゃんと付き合えるのは・・お前が卒業してからだ。』
そっぽ向いてそう言った先生の横顔が忘れられない。
私は彼女の席を予約できたわけで。
三年生になり、受験勉強を見てもらうという口実で相変わらずここに通っていた。
後少し。
卒業したら、堂々と先生の彼女になれるんだ♪
「今日もここで勉強していい?」
土「あぁ。俺は仕事してるから、そっちで勉強してろ。もうすぐ模試だろ。」
「うん。やだなぁ・・。」
土「気合い入れろ。勉強できるのは今だけだぞ。」
「したくないもん。」
土「大人になるとしたくなるんだよ。思う存分勉強しておけ。」
そう言うと土方先生は私の頭をくしゃりと撫でた。
ずるい。
これだけで私が元気でちゃうの知ってるんだ。
「はーい・・。」
土「模試が終わったら・・どっか連れてってやる。」
「え!?!?!?」
土「静かにしろ!外に聞こえるだろ!」
「だ・・だって!」
デート!?
そんなの初めてだし。
先生と生徒である限り、一緒に出かけられるなんて思っていなかった。
土「車で遠くに行けば大丈夫だろ。ほら、さっさと勉強しろ。」
「わーい!!がんばる!」
土「・・単純だな。」
あ、笑われた。
絶対子供だと思われた。
だって嬉しいんだもん。
先生とデート。
それだけを楽しみに私は苦手な数学の教科書を広げた。