「よい・・っしょ!」
今日も昨日に引き続き、図書館で本と格闘中。
どうして私のほしい本は高いところにあるんだろう。
沖「名前ちゃん、あまり手を伸ばしてると、手だけ長くなっちゃうよ。」
くすくすと笑い声がした。
振り向くまでもない。沖田先輩の声。
すると後ろからまた手がのびて・・本をとる。
沖「はい。」
同じ間違いはしない。
「ありがとうございます、沖田先輩。」
沖「・・・・。」
私・・ちゃんと笑えたのかな?
沖田先輩が少しだけ目を丸くしたから心配になる。
沖「何かいいことあったの?」
「いえ・・あの、沖田先輩。」
沖「ん?」
アドバイス4
思い切り思いをぶつけよう。後のことは考えない。うまく言おうとか思わないでその時の思いを伝えるのがいいよ。
その通りだよ、私。
「私、沖田先輩が好きです。」
沖「え?」
「先輩が・・好きです。」
どんな顔になってるとか。
そういえば髪型整えておけばよかったとか。
制服変じゃないかなとか。
声震えてないかなとか。
気を抜いたら弱気な私が溢れそうで。
でも。
好きって気持ちはもっと溢れてた。
「ずっと・・好きでした。あの、付き合ってほしいとかそんなおこがましいことは考えてなくて、ただ・・伝えたかっただけです。それだけです!」
それだけ伝えると沖田先輩の横を通り抜ける。
そのまま鞄をもって図書館を出よう。
そう思っていたのに。
沖「名前ちゃん!」
図書館をでたところで沖田先輩に呼びとめられた。でも恥ずかしくて・・そして怖くて、私はそのまま歩いていく。
沖「名前ちゃん!!!」
階段の所で腕を掴まれた。
びっくりして振り向いてしまう。
沖「言い逃げはずるいよ。」
沖田先輩はそう言うと、そのまま私の手をひき、階段を上がっていく。
「あの・・先輩、そっちは屋上。」
沖「知ってるよ。」
立ち入り禁止と書かれたドアをおかまいなしに開けると沖田先輩は屋上へ出た。もちろん、手を掴まれている私も。
「先輩?」
沖「正直、驚いた。」
「え?」
沖「だって、僕は名前ちゃんに嫌われてると思ったから。」
「えぇ!?」
私を引っぱって屋上へ進んだ沖田さんの背中を見つめる。
手はまだ掴まれたまま。
沖「他のみんなと明らかに態度が違うから。表情もかたいし、あまり笑ってくれないし、すぐに他の人のところ行っちゃうし。」
「それは・・。」
沖「嫌われてるって思ったらすごくつらくて。そしたら君のこと好きなんだって気がついた。」
好き?
私のことが・・?
そう言うと沖田先輩はやっとこっちを向いてくれた。
多分顔が赤いのは夕日のせいではないと思う。
沖「なるべく話したくて、最近は普段行きもしない図書館に行ったんだよ。君に会えるから。」
「あ・・。」
確かに。いつもテスト前に私は図書館で勉強していたけど、沖田先輩を見たことはなかった。
それなのに、最近ほぼ毎日図書館にいる。
沖「僕と付き合って下さい。」
「はい!」
沖「やっと思い切り笑ってくれた。」
そう言うと沖田先輩は私を抱きしめる。
いきなり先輩との距離がゼロになった私は大慌てだったけど。
先輩は笑って放してくれなかった。
「先輩っ!放してください!!」
沖「無理だよ。だって嬉しいもん。」
「おおおおお願いですから!」
先輩の香りにくらくらする。
手をつないで帰れればいいって思っていた私には刺激が強すぎた。
顔をあげると意地悪そうに笑う先輩。
多分わかってやってるなぁ・・。
「先輩、放して。」
沖「仕方ないなぁ。」
「っ・・。」
おでこにキスがふってくる。
口をぱくぱくさせることしかできない私をようやく先輩は放してくれた。
こうして
強がりな小心者の恋愛は。
少し意地悪で飄々としている彼と結ばれ。
やっと実ったのでした。
終