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アドバイス3
相手の好意に素直に甘える。変に強がらないこと。








素直って・・なんだ。












 「んーっ・・・。」




思い切り背伸びをした。
もう少し。
あと少し。



あとちょっとで本に手が届く。



ちょんっと本をつつくことさえできれば。



重力で落とすことができるんだけど。




テスト前ということもあって図書館にはいつもより人がいた・・けれど。
知っている顔がいなくて。


さっきから高い位置の本と格闘中。


よし・・ここはジャンプして・・。


思い切り真上に飛ぼう・・とした時。


ひょいっと横から手が伸びて、私がとりたかった本がその手に吸い込まれていった。



 「あ・・。」



沖「はい、名前ちゃん。これがほしかったんでしょう?」



 「・・沖田先輩・・。」



どうして沖田先輩が!?
ってこれ・・なんかマンガとかでよくあるシチュエーション!?



 「す・・すみません。」




どうして私は。


ここでにっこり笑顔でありがとうと言えないんだ!!


なんで俯きがちにすみませんなんて言っちゃうの!?可愛くない。



沖「どういたしまして。化学・・わからなかったら言って?僕はそこの席にいるから。」



そう言って先輩が指さしたのは私がとっていた席の斜め前。

にこりと微笑んで先輩は席に座った。




正直化学は苦手だ。
ここは素直に先輩に聞けばいい。



なのに。



本を持って席に着く。

斜め前に沖田先輩。

涼しげな顔で目の前の問題を解いている。




 「先輩・・この問題、教えてください。」





って言えたらな。


あわよくば隣の席にいって教えてもらいたい。







だめだだめだ!

人にばっかりアドバイスしてないで!


ここは勇気をだして・・。



 「あの・・・沖田先輩・・。」




先輩「沖田君!」




沖「ん?」



沖田先輩の横に知らない先輩が立っていた。多分、先輩のクラスメイトかな。



先輩「ごめん。この問題聞いていい?」



沖「いいよ。」




目の前で沖田先輩が問題を解き始めた。
うんうんと頷いて聞いている女の先輩は綺麗で、大人っぽい。
そして二人の距離が近くて。
でもそれが似合ってて。





苦しくなって私は荷物をつかむと図書館を出た。









 「何してんだろ・・。肝心なとこで。」




家に帰ると部屋に直行した。
ごろんとベッドに倒れこむ。








こと、自分の恋愛になると小心者になる。
言うことだけは一丁前で。
すぐに強がるくせに。


こんなときに一歩踏み出せない。



私・・どうしたいんだろう。

沖田先輩が好きなのに。


何もできてない。
ただ見てるだけだ。
こんなんじゃ思いなんて伝わらないのに。

いつもそう。
自信がなくて諦めて。
恋じゃなかったと思って素通りするんだ。
後悔するだけなのわかってるのに。
でも、思いが伝わった後が怖い。
時間は戻せないから。
言ってしまったら、その言葉はもとに戻せないから。





 「私はどうすればいいのかな・・。」




どうすれば・・いいか。



そんなこと。



頭ではわかってるんだ。





















沖田先輩と手をつないで帰りたい。


休みの日は二人で出かけたい。


一緒に遊んで、笑って、ときにはケンカしたりして。











あなたの一番近くにいたい。















 「簡単なことだよ・・。」





ずっと考えていた理想を現実にする。
躊躇しちゃだめだ。

   

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