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しばらく教室でぼーっとしてから帰り支度をした。
もう学校に残っているのは部活をしている生徒ぐらいだろう。
校舎は人気がない。



外に出るともう夕方だというのに気温は高かった。じめっとこの時期独特の空気がまとわりつく。もう夏は目の前だ。




平「あれ、名前?」



校門の外に見慣れた顔。
クラスメイトの平助だった。



 「平助。部活?」



平「おう。今終わってこれからみんなで飯食いにいくんだ。名前も来る?」



 「え?私も?」



平「お前だいたい顔見知りじゃん。どう?」



剣道部の人とは平助を通じて仲良くなった。
そして。


私が思いを寄せている人も剣道部であり。




沖「あれ?名前ちゃん。どうしたの?」





沖田先輩、この人である。





後ろからいきなり沖田先輩の声がして。



心臓の音が脳まで聞こえた。









アドバイス1
まず大切なのは笑顔だと思う。いつも笑顔を心がけること。







散々友達には言ってきたのに。







 「あ・・沖田先輩。お疲れ様です。」








有言実行ってなんだ。







沖田先輩を目の前にするとどうしても固まってしまう自分がいた。





平「ちょうどここで会ったんだよ。名前も飯一緒に行っていいよなー?総司。」




沖「もちろん。平助君はどうして名前ちゃんと違って先輩って呼べないんだろうね?」



にっこり笑いながら平助の頭をぐりぐりしている沖田先輩。
これが他の人だったら一緒に平助をいじめるか、横で大笑いできるのに。







アドバイス2
がんばって勇気をだす。話しかけること、近づくこと、相手の視界に入ることが大事だと思うよ。










勇気ってなんだ。





頭でいくらわかっていても。



私の手も足も口も思うように動いてくれない。








二人の様子を黙って見ていることしかできなかった。







原「待たせたな。」




永「腹減ったー。・・っとあれ、名前ちゃんだ。一緒に行くのか?」




 「えっと・・いいんですか?」




斎「問題ない。」




いつの間にか三人増えていて、私達は近くのファミレスへ向かった。





永「名前ちゃん何が食べたい?」



 「えっと・・パスタ食べたいです。」



原「いっぱい食わねぇと大きくならねぇからな。」



ガシガシと原田先輩に頭を撫でられる。



 「わわっ・・髪がぼさぼさになるじゃないですか!!」




永「大丈夫だ。ぼさぼさでも可愛いからよ!」



 「何言ってるんですか、永倉先輩・・。」



大きい二人に挟まれるように歩いているとその間を平助がわりこんできた。




平「ちょっとちょっとー二人で名前をいじめんなよな!」



原「いじめてねぇよ、このがきんちょが!」



原田先輩の標的が平助に切り替わり、今度は二人して平助をいじりはじめた。



 「あははは。平助がんばれ。」



平「お前笑ってないで助けろ!」



目の前で三人が戯れているのを見ているといつの間にか横に斎藤先輩がいた。



斎「相変わらず騒がしくてすまない。」



 「いえいえ。楽しいですから。でも私がお邪魔してよかったんですか?」



斎「・・あんたさえ良ければいつでも来てほしい。」



 「え・・?」



斎「空気が和むからな。」



 「あ・・ありがとうございます//」



なんかそんなことを言われると照れてしまう。




沖「名前ちゃん、顔が赤いよ?一君に何か言われたの?」



 「え!?」



逆側からいきなり沖田先輩があらわれた。

近い・・。




ニッと少し意地悪そうに細められた目。
吸い込まれるように見つめてしまう。



沖「名前ちゃん。」



 「はい・・。」



沖「そんなに見られると、僕穴があいちゃいそうなんだけど。」



 「え!?あ・・すみませんでしたー!!」



謝ることしかできなくて。
いたたまれなくなって前の方にいた平助達のところへ走る。




あぁ。
どうしてこうなんだろう。



他の人には普通に話すことができるのに。

   

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