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 「あ・・あ・・あ・・ごごごめんなさい!」



思い切り部屋をとびだそうとしたのにまたしても手を掴まれてしまう。
だけど今回は私もあきらめない。



平「名前!」



 「は・・はなして!」



平「いやだ。」



 「お願いだからー。」



平「無理だって。」



そのままグイッと腕をひかれ体が後ろに倒れる。
倒れた先は平助君の腕の中で。




 「平助君!?」



平「捕まえた。」



後ろから少し楽しそうな声。
ぎゅっと抱きしめられると身動きが取れない。
後ろをふりむく勇気なんてない。




平「俺口癖わかったんだよ。」



 「え?」



平「俺の口癖、お前の名前だ。」



 「私の・・名前?」



平「いつのころからか、名前ってお前の名前を呼ぶのが口癖になってた。名前がどこか出かけてても、つい呼んだりすることあるし。」



 「あの・・それって。」



平「うん。俺も名前が好きだから。」



耳元に流れ込んでくる一番欲しかった言葉。
嬉しいのに。
恥ずかしすぎてまだ彼の顔が見られない。



どうしようかと考えていると平助君は私を腕から解放し、すぐにこちらに向かせた。



平「顔・・赤いな。」



 「平助君もね。」



平「仕方ないだろ・・好きな子に好きって言われたらこうなるって。」



 「私だって!」



なんだかお互いどんどん恥ずかしいことを言ってしまいそうで。
どちらからともなく黙る。


すると今度は前から抱きしめられた。



平「頼むからさ・・。」



 「ん?」



平「こんな時間に他の人の部屋にはいくなよ。」



 「なんで?行かないけど。」



平「勘違いされんだろ。」



 「う・・//」




そうだ。

女子がフラフラ出歩く時間じゃない。
そんなことまですっかり頭からぬけていた自分が恥ずかしい。






ぐるんっ。




 「え?」






平助君の腕の中にいたまま。


私の体はぐるりと回転して、敷いてあった布団に横になっていた。
相変わらず視界は平助君の胸元だけど。




 「え?え?!?」



平「なんもしないからさ。」



 「平助君・・?」



平「もう少しだけ、こうしてていいか?」


少し顔を上げると相変わらず赤い顔をして彼がいた。
きっと私も同じぐらい顔が赤いと思うけど。
彼の腕の中が心地よくて。
拒否する理由が見つからない。



平「好きだよ、名前。」



 「私も。平助君のこと大好き。」




静かな夜の空間で。
私達の小さな恋は実ったのでした。











おまけ





すやすやと腕の中で寝息をたてる名前。
綺麗な髪を撫でて頬に手を添える。


平(何もしないなんて・・言わなきゃ良かった。)


ゆっくりと。
静かに。
名前の額に唇を寄せた。



平「これぐらいはしてもバチあたんねぇよな?」


そして自らも目を閉じ、眠りにつこうとした・・が。



 「んっ・・。」



平「っ・・!?」



名前が時々もらす寝息を聞いてしまうとなかなか寝付けず。


ひらすらに理性をフル稼働させる平助でありましたとさ。



平(何この地獄・・。)




  end 

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