土「・・・!」
あれ、なんか土方先生のどなり声が・・。
ん?どなり声!?
「はっ!」
思わず顔をあげるとクラスメイトの視線が集まっていた。
見事に寝た。
間違いない。
土「・・平助、名前、お前ら寝るとはいい度胸だな。そんなに余裕ならこの問題、わかるよな?」
ぎゃー!!
鬼ー!!!!!!
黒板の前にボスがいます。
命大事にー!!!
山「・・名字君。」
かすかに右から声が聞こえた。
横目で山崎君を見るとノートの端に答えが書いてある。
「は・・はい!」
思わず立ち上がり答えを告げた。
土「・・寝てるわりによく解けたな。今回は見逃してやる。平助、お前はあとで職員室こい。」
平「えぇー!?俺だけ!?」
教室中に笑い声が響いた。
哀れ、平助。
もう一度右を振り向いて山崎君を見た。
「ありがとー!」
拝むようにお礼を告げる。
もう山崎様と呼んでもいい。
一日ぐらいならパシリしてもいい。
・・実はこういうこと初めてじゃないけど。
何度も助けてもらってます。(学習しろ)
山「いや・・。もう寝るなよ。」
それは無理です。山崎様。
無言の笑顔をかえした。
あれ、山崎君、まだ顔赤い。
「山崎君・・顔が・・。」
――キーンコーンカーンコーン
言いかけて授業の終わりを告げるチャイムが響いた。
挨拶をして、先生が教室をでていく。
次の授業は確か自習だったはず。
周りのみんなもリラックスモードだ。
「山崎君、調子悪いの?」
本来あるはずだった化学の教科書を開こうとしていた山崎君に問いかけた。
山「いや・・そんなことはないが。」
「だって、顔が赤いよ。熱あるの?」
山「///っ・・。気のせいだ。」
「気のせいじゃないよー。ほら、でこだすでこ!」
短髪の山崎君のおでこはたやすく触れた。
あれ、意外と熱くない。
山「だ・・大丈夫です!!!」
思い切りよけられる。
「そんなに逃げられるとへこむなー。」
山「あ、いや、その。」
こんなに慌てている山崎君初めて見た。
いや、いまだかつて誰も見たことのない衝撃映像なのでは?
写真とったら沖田君とかに売れるかな。
山「名字君が変なこと言うからだろう。」
「変?」
山「その・・俺の目が・・綺麗とか。」
「・・・!?!?!?!?!?」
あれ、確か夢うつつの状態でそんなこと思ったような。
言葉になっていたんですか!?
「し・・死にたい。」
山「それは困る。」
「誰か!穴!穴ほって!」
山「!?ここは教室だぞ。ほってどうする?」
「入る。埋まる。しばらくこもる。」
穴があったら入りたい。
ほんと昔の人っていい表現する。
山「嬉しかった。」
「え?」
半泣きで山崎君を見た。
まだ顔が赤い。
山「目つきが悪いとよく言われるから。ほめられたのは初めてで・・。」
「そ・・そうなんだ。」
恥ずかしすぎて死ねる。
なんで私こんなアホなんだ。
さっきからひどくない?
女子として駄目じゃない?
「山崎君、呆れてない?」
山「何を?」
「隣の席の女子がこんなんで。授業中に寝るし、寝ぼけてなんか言ってくるし、しかもそれが一度や二度じゃないし。」
山「・・。」
「なのにいつも助けてくれるから。なんで親切にしてくれるんかなーって。」
山「・・猫。」
山崎君が伏し目がちにそう呟いた。