「幽霊が近くにいるとさ、金縛りにあって動けなくなるらしいぞ。」
原田さんがそんなことを言っていたのは昨日の夜、夕餉をみんなで食べているときだった。
それまでは話している人もいれば、黙々と食べ続けたりお酒を飲んでそれぞれが過ごしていたのに。
原田さんと平助君が一緒に話していたのは視界に入っていたが、その言葉だけたまたま広間に響いた。
「やめろよなー左之さん!そんなこと・・。」
「なんだよ、平助びびってるのか?」
「ち・・ちげぇーよ!んなわけ・・。」
二人は周りの視線が集まっていることに気がついたらしい。
「左之さんが幽霊の話なんてするから飯さめただろー。」
「くくっ・・悪ぃな平助。」
「そんな話、嘘に決まっているだろう。食べないならもらうが?」
「わっ!一君、良いって言う前に食うなよ!」
素早く斎藤さんが平助君のおかずをさらっていった。
今日は永倉さんが夜の巡察でおかず争いはなかったが、気を抜いてはいけないということがよくわかった。
そんなこんなで話は流れてしまったが・・
(金縛り・・幽霊・・。)
その怖い言葉だけが残ってしまった。