3 

次の日。私は学校を休んだ。
お腹痛いというベタな嘘で。

いつも通り、左之兄は迎えに来てくれたけど。
お母さんにでてもらった。


両親が仕事に出かけた後。
リビングへ降りてきた。

 「喉かわいたな・・。」

原「お茶飲むか?」

 「わぁああぁあぁぁぁ!」

リビングのソファに左之兄が座っていた。
我が家のようにくつろいでいる。
あ、いつものことなんだけど。

原「なんだ、お前元気じゃねぇか。」

 「な・・なんで・・。」

原「なんではこっちのセリフだ。何学校さぼってんだよ。本当に何かあったのか?」

心配そうに見てくる。
 
 「さ・・左之兄こそ。」

原「俺はお前が心配で。」

なんで。

昨日あんなひどいこと言ったのに。

どうして怒らないの?

原「どうして怒ってないのって?」

 「・・なんでわかるの。」

原「お前は顔にでるからな。怒ってるわけないだろ。お前は意味もなくあんなこと言わないし。何かあったんだろ。」

信用されているんだ、私。

原「俺は・・お前の本当に兄貴じゃないけど、お前が大事なんだ。だからつらいときは言ってほしいし、力になりたい。」


嬉しい。

とてもありがたい。

だけどそう言われれば言われるほど。

私が妹みたいにしか見られていないみたいでつらい。

もう無理だ。

 「無理だよ。」

原「何が。」

 「だって。私・・左之兄が好きなんだもん。」

原「え?」

 「力になりたいって言われても。好きなんだもん。気持ちはどうこうできるもんじゃないじゃない。」

原「お前・・俺のこと?」

 「好き。だから他の人にいつも声かけられている左之兄見てるのがつらかった。昨日も左之兄のことで騒いでいる子たちの話を聞いてつらかった。だって左之兄のいいとこ一番知ってるのは私だと思ってたけど、これからはわかんないだって思ったら悲しくて。今までは私が一番近くにいたからいろんな左之兄のこと知ってるけれど、これからは・・。」

原「これからも、お前は近くにいてくれるんだろ?」

 「え?」

左之兄はソファから立ち上がって私の前に立った。
もう涙目で前がよく見えないから左之兄の表情がすぐにはわからなかったけれど。
涙ぬぐったら次の瞬間にはもう腕の中だった。

 「左之・・兄?」

原「もうそれやめろ。」

 「何?」

原「左之。左之でいいから。」

 「なんで?」

原「お前が俺のこと左之兄って呼ぶたび、俺はお前にとって兄ちゃんなんだなって思ってたんだよ。ずっと小さい頃から俺はお前の良いお兄ちゃんでいなくちゃって。」

 「それは・・。」

原「中学生ぐらいからとっくにお前のこと妹みたいだなんて思えてなかったけれど。お前が俺を兄貴みたいにみてるなら俺はそうするべきだと思ってた。」

 「じゃ・・じゃあ私の呼び方が悪かったの?」

原「いや、お前の気持ち、全部気付けなかった俺のせいだな。」

左之兄の大きな手が髪をなでる。
その感覚が気持ちよくて目を閉じた。

原「先に言わせちまったけどよ、名前」

 「ん・・?」

原「好きだぜ。」

 「みっ・・///」

原「ん?」

 「耳もとで言うなぁ!左之兄の声ってなんか・・。」

原「なんか?」

 「やらしい。」

原「!?なんでだよ!」


一度体を離される。
本当は嫌だ。
だってこんな赤い顔、見られたくない。

原「・・っくく。お前可愛いな。」

 「///何いってんの!」

原「大事に大事に守ってきた甲斐があったわ。」

 「?」

原「さて、病人は寝てなくちゃいけねぇな。」

そう言うと左之兄はひょいと私を抱き上げた。

俗に言うお姫様だっこだ。

 「さささささ左之兄!?」

左之兄は何も言わず私を部屋まで運んだ。

重いからとか
病気はウソだからとか
何言ってもおろしてくれず。

部屋へつき、ベッドに優しくおろされた。

 「左之兄!もう一人で歩けるって・・。」

ベッドの横に座った左之兄に文句を言おうとすると、左之兄が真剣な顔でこっちを見てきた。

原「兄つけんな。次つけたら・・。」


その次はもう言葉じゃなくて。

優しい優しいキスだった。

 「////んー!?」

原「次つけたら、もっとすごいことするからな。」

そう言ってニヤリと笑う顔もまたかっこいいと思ってしまった自分が情けない。
そしてもっとすごいことって何!?
と思ってしまった自分も嫌だ。

でも。

妹みたいなもんから
彼女になれたんだって喜びで

私の胸はいっぱいになった。




  end 

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