永「名前ちゃーん!今日はお休みなんだろ!?俺も非番なんだ!だから町に行かないか?」
「いいですよ。」
永「いやいやそこをなんとか・・って・・。」
「だから、いいですよ。」
永「ほんとか!?」
断られると思っていたのでしょうね。
承諾したときは目を丸くして
でもすぐにいつもの笑顔になる永倉さん。
「私、甘いものが食べたいです。」
永「おう!まかせとけ!じゃ俺玄関で待ってるから。」
「はい。」
小さくとび跳ねながら玄関へ向かう永倉さん。
そんなに嬉しいのでしょうか?
今日私ははっきりと
お断りするつもりなのですが。
永倉さんに連れて行ってもらったのは
人気の団子屋さん。
けっこう混んでいたがすぐ席につくことができた。
永「ここのはなんでもうまいぜ。好きなもの頼んでな。」
「はい。」
永「・・夢みたいだ。」
「は?」
永「だって名前ちゃんと一緒にこうして団子食べにくるなんて・・。」
あぁ・・変に期待をさせてはいけない。
「あの。」
永「ん?」
思い切って口を開いた。
「永倉さん、私の何が良いのですか?」
永「な・・何って・・。」
「たいして話したこともない人をそんなに好きになれるものですか?」
永「いや・・その。確かに名前ちゃんとは必要以上に話してはいないけどよ。でも、いつも一生懸命働いているところ見てたり、ふと笑顔になったときは可愛いなって思ったり・・。」
永倉さんは目を泳がせながら必死に言葉を紡いでいく。
わかってる。
この人は悪い人じゃない。
きっと私を大切にしてくれるんだろう。
それぐらい・・わかる。
永「お互いのことはこれからもっと知っていけばいい。それで嫌になったらいつでも言ってくれればいいから・・だから、俺と・・。」
「ごめんなさい。」
永「・・どうしてもか?」
「永倉さん、良い人ですよね。」
永「?」
「わかります。それぐらい。きっと私を大切にしてくれる。」
永「そりゃ当たり前だろ!」
「でも・・きっと私をおいていってしまいます。」
永「どういう意味だ?」
「はーーい、団子おまち!」
永倉さんの質問と重なるように店主が団子を持ってきた。
お茶もおかれる。
「食べましょう、永倉さん。いただきます。」
永「あ・・いや、だから。」
団子を頬張る。口の中に甘みが広がっていった。
「おいしいです。」
無理やり笑った。
初めてだった。永倉さんに笑うのは。
でも
うまく笑えている自信はなかった。