永「好きだー!名前ちゃん!!!」
「静かにしてください。永倉さん。」
あなたと私の間にはだいぶ距離があるのに
目の前で言われているかのように聞こえる大きな告白。
ほら、間にいる隊士さん達が全員こちらを見ているじゃないですか。
どうしてくれるんですか。
洗濯物をとりこみ、部屋へ持っていこうとしている廊下で盛大に叫ばれた。
ふりむくと遠くに永倉さんが手をふっているのが見える。
その間にいる隊士さん達が苦笑いでこちらを見ている。
もう日常茶飯事だから。
ここに女中として働きに来るようになってから2カ月ほど。
どの方とも特別親しくなることもなく、
仕事上必要なことしか話していなかった。
仕事場で親しい人を作るつもりがなかったからだ。
しかもここは男の人ばかり。
自意識過剰になるつもりはないけれど自分の身は自分で守るしかない。だから必要以上に会話を交わしたくなかった。
なのに。
なんなんですか、あの人は。
笑顔全開で近づいてきた。
原「新八、名前ちゃんが驚いているだろ。もう少し静かに言えないのか?」
一緒に原田さんも来る。
良かった。原田さんがいないと止められる人がいない。
永「この気持ちを抑えることなんてできないんだよ。名前ちゃん、一緒に団子食うか?」
笑いながら手に持っていた包みを差し出してきた。
「けっこうです。仕事があるので。」
永「そこをなんとか!」
土「なんとかじゃねぇ!!人の仕事の邪魔すんな!」
いつの間にいたのでしょう、土方さん。
・・助かりましたけど。
永「ひ・・土方さん!びっくりした。いつからいたんだよ。」
土「お前のでかい声が部屋まで聞こえてきた!もっと静かに言えねぇか!?」
原「それは俺も言ったんだけどな。」
原田さん、苦笑してないで叫ぶ前に止めてください、全力で。
「私はこれで。」
永「あぁー名前ちゃーん!」
大量の洗濯物を持ち、走るようにその場を去った。