「…大丈夫でしょう。ただの貧血です。」
「そうですか。」
「私は職員会議があります。よろしく頼みますよ。」
「はい。」
声が聞こえる。
ゆっくりと目をあけると白い天井が見えた。
あれ?ここどこ?
シャッと勢いよく横のカーテンが開いた。
その姿に思わずベッドから起き上がる。
「やっ山崎君!!!」
「気がついたか。寝ててくれ。倒れたばかりだぞ。」
どういうこと!?ここ、保健室!?
あれ?私何で寝てたの?
「いきなり教室で倒れたんだ。貧血だと思う。」
「貧血…。」
そういえば今日急いでて朝ごはん食べてなかった。そのせいかな。
いや、そんなことより何より。
山崎君と二人きりなんて…気まずいよ。
だってさっき思い切り無視されたのに。
「水飲むか?」
「何で無視したの!?」
すっと水のペットボトルを差し出してくれた山崎君に思わず言葉がでた。
…いや、ですぎだよ。ストレートすぎるよ、少しはオブラートに包もうよ私。
「無視…?」
山崎君は面食らった顔をしていたけどすぐにいつもの表情に戻る。
「昨日のメール…。」
「メール?何のことだ?」
「え?」
私はポケットから携帯を取り出し送信メールを確認する…が。
「あれ?ない…。」
「…未送信なんじゃないか?」
「!!!」
まさかのまさかでその通り。
私ってば送った気になってたなんて…なんたる失態!
「そ…それだけじゃなくて。さっきも、ううん、朝校門のとこでも。山崎君私と目が合ったのに逸らしたよね?二回ってことは偶然じゃなくて…。」
偶然じゃない。
だとしたら、あえて無視したってことになる。
なんで?私何をしたんだろう。
そう思うとどんどん目の奥が熱くなってきて視界がぼやけてきた。
「名字君!?何故泣いているんだ?どこか痛いのか?」
「ち…違うよ。山崎君に無視されたって思うとつらくて涙が勝手に…。」
「無視なんて…いや、確かに思わず目を逸らしはしたが…。」
「やっぱりぃぃぃぃ。」
今の一言が決定打となった。
涙がぼろぼろ落ちてきて鼻水まで出てきている。
もう終わりだ。こんな最悪な顔見られたら終わりなんだ。
さようなら私の青春。お祭り行くどころか教室で顔を合わせるのも辛い状況なんて。
「違う!それは君が!!!」
ぐいっと手首を掴まれた。
その熱に涙が止まる。
「あ…あ…。」
「名字君?」
「や…山崎君に手…掴まれた…。」
「!」
山崎君が顔を赤くして手を離す。
そんな思い切り離さなくても…。
でも手首に残る感触に私もつられて赤くなる。
「俺は…自惚れていいのか?」
「??」
「さっきからの君の言動を分析すると俺のことを慕ってくれているように思うのだが。」
「…!!」
私 の ば か!!!
そうだよ。
無視されてつらいとか、手掴まれたって言って照れるとかそんなのもう。
「好き…なのか?」
好き…だよ。
もう気付かれてるのに、逃げられないのに。
いざその二文字を言おうとすると声がでない。
だって、その言葉を言ったらもう戻れない。
まだ振られる覚悟がない。