「おはよー。」
「…。」
「あれ?総司、聞こえてないの?おーはー…。」
「聞こえてるようるさいなぁ。」
「ちょっと!挨拶してるのにうるさいとか!!!」
「こっちは眠いんだよ。誰かさんが永遠とあーだのうーだのうなりながらほとんど意味のない電話をしてくれたもんだからね。」
「…ごめんなさい。」
「とりあえずさ、学校着いたら山崎君に聞いてみたら。」
「うん…。」
少し聞くのは怖い気がするけれど。
これで何もしなかったら総司に申し訳ないよね。
総司と並んで学校へ歩き出す。
後少しでつく…といったところで遠くに山崎君の姿が見えた。
向こうから歩いてくる姿はどんなに小さくても気づける自信があるよ!!!
「あれ、山崎君じゃない。」
「うん!おはよー!」
ぶんぶん手をふると山崎君と一瞬目があった…気がした。
というのも彼はそのまま校門の中へ入ってしまったから。
「あ…れ?」
「見えなかったんじゃない?ほら、僕達も急ぐよ。」
隣にいた総司はそう言うと私の腕を掴んで校門へと引きずる。
斎藤君がチェックしてるからぎりぎりだと怖いんだよね。それはわかるけど。
(目があってなかった?もしかして…無視!?)
そんなことないよね。山崎君に限って。
そう言い聞かせて私は教室へと向かった。
どうやらぎりぎりだったようで教室に入るとすぐに永倉先生が来てしまった。
うう、山崎君に話しかけたかったのに。
ちらりと山崎君の方を見るとすでに彼は前を見ていて…斜め後ろの姿しか見えない。
(好きな人って、どんな方向から見ても好きなんだな…。)
そんなことに気付いてしまった。
山崎君ならどんな山崎君でもきっと私は好きなんだ。
ホームルームが終わって一時間目が始まる前の休み時間に山崎君の所へ行こうと思っていた。
「名前。山崎君のとこいけば?」
後ろから総司に声をかけられた。
言われずもがな!行きますわ。
「わかってるよー。」
もう一度山崎君の方をちょうど目が合った。
…はずなのに、思い切り目を逸らされたのだ。
「!!!」
「…あれ、山崎君無視?感じ悪いね。」
ちょっと黙ってて総司。
今整理してるから。心の中整理してるから。
目が合った。
逸らされた。
嫌われた!?
(私…何かしちゃったんだ!)
サッと血の気がひくのを感じた。
滅多に貧血なんておこさないのに何だかくらくらする。
「名前!」
総司の声が遠くから聞こえて、そのまま私は意識を失った。